紛争の内容
会社員のAさんは、妻Bとの間に高校生の息子Cを一人もうけていました。
Cが幼いうちはBとの関係は悪くなかったものの、Cが思春期となり、学校のことに悩むようになると、BはCを持て余すようになり、AさんにCを叱るよう強制したり、AさんやCさんが自分の思い通りに行動しないと、激しく怒鳴ったり、Aさんに暴力を振るうようになりました。
ある時、BがCの態度に腹を立て、それをかばったAさんにもBの怒りの矛先が向けられ、Aさんに殴りかかるということがありました。Bの余りの態度にAさんは警察を呼ぶほどでしたが、警察のアドバイス及びCが「お母さんとは一緒に暮らせない」という本音をこぼしたことから、AさんではなくBが自宅を出て、別居を始めることになりました。
Aさんとしては、もはやBは反省することはない、と感じるようになり、離婚を求めましたが、Bは「Cのことが心配だ。自分は離婚したくない。」などと離婚を拒否し、Aさんはやむなく弁護士に依頼して離婚調停を申し立てることになりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
Bは、離婚調停には参加するものの、離婚したくない、自分の暴力は大したことがない、などと主張し、離婚自体に応じなかったほか、離婚するとしてもCの親権を主張するとしました。
しかし、CはBと一緒に暮らしたりすることは絶対に嫌だと拒否し、面会交流(親子交流)にすら応じないという状態でしたので、やむなく離婚訴訟を提起することにしました。
離婚訴訟では、Bにも弁護士が就き、これまでのBの言動やAさん・Cの離婚についての決意がゆるぎないことから、裁判官も離婚をする前提での和解を勧試してきました。
本事例の結末
Bに就いた弁護士も、裁判官の和解勧試にはさすがに応じざるを得ないと判断し、財産分与を条件に、Cの親権者をAさんとすることに同意して離婚するとしました。
Aさんは会社員として長年務めており、Bも会社員としてフルタイム勤務をしていましたが、共有財産である不動産はBが取得を主張したため、Aさんの持分をBが買い取ることとして、AさんがBから代償金を得ることとなりました。不動産は購入時より高騰しており、かつローンもほとんど残っていなかったため、AさんはBか500万円以上の代償金を払ってもらうことができたのです。
本事例に学ぶこと
一般的にはDVは「女性が被害者」というイメージが強いかと思いますが、男性側がDVの被害者というケースも存在します。そして、男性が被害者である場合、どうしても「恥ずかしい」「どうせ信じてもらえない」などという固定概念から、なかなか警察や弁護士に相談することも難しいということが多いように思います。しかし、DVは決して許されるものではなく、それは加害者が女性・被害者が男性であっても同じです。
また、財産分与も「夫が妻に払うもの」というイメージが多いと思いますが、分与の仕方などによっては男性側が女性側から財産を分けてもらう、ということもあります。
確かに、どうしても事件によっては「結論に一定の傾向がある」ということは否定しませんが、親権についても財産分与についても決して思い込みで諦めたりせず、きちんと請求すべきものを請求することが大切と思います。
弁護士 相川 一ゑ




