【個人事業主の離婚】代々続く家業を守りつつ、学費と解決金の柔軟な取り決めで早期解決した事例

紛争の内容

ご依頼者様は、代々家業を受け継いできた個人事業主(経営者)の夫側でした。

個人事業主の方によくあるケースですが、個人の通帳に「事業用資金」がプールされていました。

離婚に伴う財産分与の際、相手方(妻)から見れば、その通帳の残高すべてが「夫婦の共有財産」に見えてしまい、「残高の半分を分与してほしい」と主張されるリスクがありました。

しかし、その資金は給与や仕入れに使われる、いわば「事業の血液」です。

これを形式的に半分にされてしまっては、家業の存続そのものが危ぶまれます。

交渉・調停・訴訟等の経過

通帳の残高を1円単位で争うような泥沼化を避け、「妻が本当に求めている安心」を優先して提供することで、早期に離婚を成立させる戦略をとりました。

妻側が最も懸念していたのは、自身と子供たちの将来の生活設計、特に教育費のことでした。

そこで、私たちは事業用資産の詳細な開示や分与争いを避ける代わりに、子供たちの教育費と解決金について、非常に手厚く、かつ実情に即した柔軟な提案を行いました。

具体的には、長男と長女の養育費について、一般的な相場よりも手厚い金額を設定しました。

特筆すべきは、支払いの「終期」を画一的に「20歳まで」とするのではなく、子供の進路に合わせて柔軟に変動させる条項を盛り込んだ点です。

  • 4年制大学に進学した場合:満22歳到達後の3月まで
  • 短期大学や専門学校の場合:満20歳到達後の3月まで
  • 就職した場合:満18歳到達後の3月まで

さらに、大学や専門学校等の入学金および授業料についても、ご依頼者様がその全額を負担することを約束し、妻側の経済的不安を徹底的に払拭しました。

また、既に長男の大学進学に際して妻が立て替えていた入学金や授業料相当額についても、解決金とは別に速やかに支払う誠意を見せました。

本事例の結末

代理人同士における真摯な情報開示、柔軟かつ誠意ある提案の結果、妻側もこれに納得し、公正証書による契約締結に至りました。

最大の懸案であった財産分与については、「解決金」を一括で支払うことで合意しました 

これにより、事業用通帳の細かな精査や、事業資金への過度な干渉を防ぐことに成功しました。

その結果、調停や裁判を長引かせることなく、協議離婚という形で早期かつ円満に関係を解消することができました。

本事例に学ぶこと

本件から学べることは、経営者の離婚においては「損して得取れ」の精神が時に重要であるということです。

長引けば長引くほど、婚姻費用の支払が重くのしかかります。その上で、いずれは離婚時の財産分与をしなければならず、長引くことは問題の先送りにしかなりません。

事業用資産を守るために、財産分与の計算で細かい攻防を繰り広げれば、解決まで数年を要することも珍しくありません。

その間の精神的ストレスや、経営判断への悪影響は計り知れません。

本件のように、相手方が重視する「子供の学費」や「手当のまとまった現金」に対し、柔軟かつ手厚い条件を提示することで、結果として大切な家業の資産(事業基盤)を守り、驚くほどスピーディーに新しい人生を歩み始めることが可能になります。

当事務所では、経営者特有の事情を深く理解し、単なる法律論だけでなく、ビジネスと人生のトータルバランスを考えた解決策をご提案します。事業資産と個人の生活、どちらも守りたいとお考えの方は、ぜひ私たちにご相談ください。

弁護士 時田 剛志