妻との別居期間1年経過後も離婚ができていなかったケース

紛争の内容
 会社員をしていた男性Aさんは、女性Bと結婚し、Bは主婦として家のことをこなしていました。結婚後5年目にして、長女Cが生まれましたが、Cが生まれてからBが家事をおろそかにするようになり、そのことがきっかけで夫婦喧嘩が絶えないようになりました。Cが1歳になったころ、突然BはCを連れて実家に行ってしまいました。Aさんは何とかBとの関係改善をしようと、Bの実家にも何度も足を運び、電話もしましたがBは応じず、Cにも会えない状態が続きました。Bには、生活費として別居中もお金を払っていましたが、別居が1年に及ぶようになると、AさんもBとの離婚もやむなしと考え、Bにその旨伝え、Cとの面会交流も求めましたが、Bからの回答はありませんでした。仕方なく、Aさんは弁護士に依頼し、交渉で離婚や面会交流の話をBとしていくことを考えましたが、弁護士からの連絡も無視したBに対し、やむなく離婚及び面会交流を求める調停を申し立てることにしました。

交渉・調停・訴訟などの経過
 調停期日には裁判所に訪れたBでしたが、面会交流は第三者機関を通じなければできない、離婚に当たっては財産分与として数百万円払えなどと求めてきたため、ただちに話はまとまりませんでした。
ただ、面会交流は子のためにするものですから、弁護士の提案により、まずは子C自身がAさんとの面会交流を拒否するかどうかということを確認すればよいということになり、試しにAさんとCとでテレビ電話の形で間接的な面会交流をしてみることになりました。2歳になっていた長女Cは、Aさんのことを覚えており、Aさんとの会話に全く拒否感を示しませんでした。また、長女Cにクリスマスプレゼントなどを父からあげたいという話になりました。
これを受けてBも態度を軟化させ、直接の面会交流ができるかのチェックのため、半年間は第三者機関を通じての面会交流としつつ、その後は直接父母間でやり取りをするという内容で面会交流の合意を成立させました。
また、離婚についても母Bを親権者とする前提で、財産分与も当初数百万円求めていたBでしたがその財産の内容がAさんの財産ではなく、親からの相続財産や独身時代に築いたものであると資料を示し、分与の対象ではないということに納得してもらいました。

本事例の結末 
結果として、Aさんは唯一の夫婦共有財産として積み立てていた学資保険の解約返戻金の半分50万円だけをBに分与し、親権者をB、面会交流は月に1度として離婚の成立ができました。

本事例に学ぶこと
 婚姻費用を払いながら、その後離婚も復縁もできない状態が続き、子どもにも会えないという状況に陥る方は、決して少なくありません。当事者双方では面会交流がなぜできないのかを知り、実施するための障害を取り除くということはなかなか難しいと思われますが、裁判所を通じて、歩み寄りができることもあります。
また、離婚についても、条件として裁判所の中立的なアドバイスを受けて、相手方の態度が軟化することもあるので、調停という場にステージを移し、夫婦の問題について話し合うということで問題が解決できることもあると感じました。

弁護士相川一ゑ