財産分与にあたって特有財産の主張が認められた事例

紛争の内容
本件では、夫(依頼者)と妻(相手方)との間では、離婚自体については争いがなく、財産分与が争点となりました。具体的には、夫の所有する不動産について夫の両親が不動産購入費用を出捐したことから財産分与対象となる夫婦共有財産にはあたらないことのではないかという点での争いとなりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
不動産については、夫の両親が不動産の売買契約を締結して住宅ローン契約(金銭消費貸借契約契約)を締結したことを立証していきました。これらの基本契約を根拠付ける契約書は存在していたものの、夫の両親が住宅ローンを支払ったことを基礎付ける資料そのものは存在しませんでした。そこで、住宅ローンの償還表や、夫の両親の預金口座からの金銭の支払いを照合し、双方が一致していることをもって、夫の両親が住宅ローンそのものを支払っていたことを主張しました。

本事例の結末
妻側代理人から、夫の両親の預金通帳からは、住宅ローン全額の支払いの事実は認められないとの反論がなされました。そこで、ただ預金通帳を証拠として提出するのではなく、預金の履歴を合計した金額や、償還表と合致する金銭支払い、金銭支払いが終了した時点と隣接した時点での抵当権登記抹消の事実等を、個別具体的に丁寧に主張していきました。

その結果、裁判所から、不動産が全て夫の特有財産であるとの判断を得ることができました。

本事例に学ぶこと
財産分与が争点となる際、特有財産であることの立証が困難であることが多いところです。様々な事実・証拠資料を組み合わせて、特有財産であることのストーリーを肉付けして、特有財産性の主張をしていくことになります。本件でも、考えられる資料を様々な観点から検討し、特有財産であることの主張が認められるに至りました。

弁護士 時田 剛志
弁護士 平栗 丈嗣