婚約破棄に伴う損害賠償請求をされ、請求額の9割を減じることができた事例

紛争の内容
依頼者は、交際相手と婚約していましたが、交際相手が結婚の条件を反故にしたため、依頼者は婚約を破棄しました。すると、交際相手が婚約破棄により慰謝料のほか損害を被ったとして、1000万円以上を求める訴訟提起をされました。

交渉・調停・訴訟等の経過
争点は、①婚約破棄が交際相手の結婚条件破棄を理由とするもので正当なものといえるか(責任論)、②慰謝料やその他の損害の内容が妥当といえるか(損害論)の2点でした。

まず、責任論について、少なくとも、婚約破棄という事実自体は存在しており、婚姻の約束が成立していないというむやみな争点形成はやめ、婚約破棄が相手方の落ち度によるものとの主張をしていきました。もっとも、交際相手との結婚条件を示す証拠資料が見つからず、LINEのやり取り等の背景を推測させる間接的な証拠に基づく主張を行っていきました。

次に、損害論について、相手方の主張する、慰謝料・その他の損害項目について、一点一点緻密に反論を加えていきました。
慰謝料については、裁判例上、それぞれの両親との関わり・結納の有無、女性側の年齢、挙式の有無、妊娠の有無等、様々な要素により金額が上下します。そこで、様々な要素を詳細に指摘することで、精神的損害の程度が軽いとの主張をしていきました。
その他の損害項目については、行為と損害との相当因果関係の有無、実際に損害がどこまで発生したのか、丁寧に反論を加えていきました。

本事例の結末
責任論については証拠に乏しく、依頼者の主張は認められませんでした。他方、損害論については、こちらの主張が大幅に認められ、請求金額の9割を排斥することができました。

本事例に学ぶこと
訴訟においては、争点を見極め、どこを主戦場として戦っていくかを考えて注力するかがポイントになります。本件でも、総花的な反論をするのではなく、重要な・こちらに有利な点で徹底的に争い、大幅に有利な結果を得ることができました。

弁護士平栗丈嗣