過去の不貞についての慰謝料と、財産分与について請求されたが、その請求を退けた例

紛争の内容
会社員のAさんは、妻Bと婚姻5年目となっていました。

二人の間には子が二人いましたが、婚姻1年目の第一子をBが妊娠していた時、Aさんは他の女性と不貞関係を持ってしまいました。

その際、AさんはBに対し謝罪をし、慰謝料として150万円を支払いましたが、それでもBの怒りは収まらず、「AとBとが離婚するときには、この150万円とは別途、AはBに慰謝料300万円を払う。」との内容で誓約書をAさんに書かせました。

その後結婚3年目にBが第二子を出産してしばらくすると、Bは突然夜遊びをするようになり、第一子や生まれたばかりの第二子をAさんに任せて家を空けることが多くなりました。

Aさんは、Bが他の男性Dと不貞していることに気付き、ドライブレコーダーなどからBがDと密会していることを突きつけましたが、Bは謝罪もせず、Bとの生活に耐えられなくなったAさんは実家に引っ越し、週末だけ第一子及び第二子と面会交流するために自宅に帰るという生活になりました。

Bの態度は変わらなかったため、Aさんはやむなく弁護士を依頼し、協議離婚を試みました。

交渉・調停・訴訟等の経過
交渉時、Bはやはり謝罪せず、Dとの不貞行為の存在を否定しました。

Aさんは更に離婚調停をしましたが、Bは「慰謝料は払わない、むしろ自分は誓約書に基づきAに金を払ってもらう側だ」「財産分与として自宅の売却費用を分与せよ」などと主張しました。

話は平行線で、調停は不調となり、離婚訴訟となりました。

本事例の結末
結局、離婚訴訟の中では自宅以外にも夫婦に財産があること、自宅には高額の住宅ローンも残っていたこと、生活費はほぼAさんが出していたことから妻Bも預貯金を大量に持っていたこと、Bもその後Dと不貞していたことがドライブレコーダーの画像から否定できず、Bからの誓約書に基づく慰謝料請求、財産分与請求はいずれも困難との心証を裁判官から開示され、AさんはBに対し一切慰謝料や財産分与をすることなく、離婚することが認められました。

本事例に学ぶこと
夫婦双方に離婚原因がある場合の慰謝料請求や、財産分与における積極財産・消極財産についても、丁寧に事情を読み取り、裁判官に伝えることで、不当な請求を排除することが考えられると感じました。

弁護士 相川 一ゑ