当事者双方が相手方を有責配偶者であると主張していた離婚事件について

紛争の内容 
会社員をしているAさんは、婚姻して30年の妻Bがいました。AさんとBさんの間には2人の子どもがいましたが、いずれも独立しています。Aさんは長年妻Bからの暴力やモラハラ、そしてBがAさんの親との交流を一切断っているという言動を見せていることに心を痛めていました。あるとき、Aさんは家庭のことを相談していた女性Cさんと不貞関係に至ってしまい、そのことがBに発覚したため、激しく罵られるようになりました。Bは、当初自らAさんと離婚するなどと述べていましたが、その後翻意し、「Aが退職金をもらうまでは別れない」などと主張するようになりました。定年退職までは5年以上あり、それまでBとの婚姻生活を続けることに耐えられないと考えたAさんは、弁護士に相談し、依頼することにしました。

交渉・調停・訴訟などの経過 
弁護士から、Aさんが離婚を決意していることを伝えても、Bの離婚拒否の意思は変わりませんでした。そこで、やむなく離婚調停を申し立てましたが、Bはその中でも「退職金をもらうまで離婚しない」と主張したため、調停は不成立となり、Aさんは離婚訴訟を提起することにしました。訴訟の中でも当初BはAさんが有責配偶者であることを主張し、離婚を拒否しました。しかし、Bにも離婚原因になるような暴力やモラハラがあったこと、ある程度まとまった解決金を支払うことを示し、裁判官からBに対する和解の説得がなされ、結果としてBは離婚に応じることとなりました。

本事例の結末 
Bは、Aさんの退職金よりははるかに低額の慰謝料給付で離婚に応じることとし、本件は和解離婚が成立しました。夫婦の共有財産として、自宅や車もありましたが、その財産分与については一般の5:5のとおりで分けることとして合意ができました。

本事例に学ぶこと
 Aさんは、有責配偶者として判決であれば離婚が認められない可能性も少なからずありましたが、B側の落ち度や、ある程度の慰謝料支払い・財産分与を踏まえ、和解離婚という成果を得ることができました。判決になってしまうリスクをどの程度重視するかよく検討する必要があると感じました。

弁護士 相川一ゑ