減収後の実収入に基づく適正な養育費で調停離婚を早期成立させた事例

紛争の内容

Aさんは、妻から家庭裁判所に離婚調停および婚姻費用分担調停を申し立てられた、当初はご自身で調停に対応されていたものの、双方の主張が対立して話し合いが平行線をたどり、解決の糸口が見えない状態が続いていました。

別居期間が長引くほど婚姻費用の支払いが継続し、経済的・精神的な負担が重くのしかかることから、事態を打開すべく当事務所へご依頼いただくこととなりました。

主な争点は以下の点でした。

  • 別居期間中の適切な婚姻費用額の算定
  • 未成年のお子様の親権の帰属
  • 離婚後の養育費の算定基準(夫の減収をどう考慮するか)

交渉・調停・訴訟等の経過

1. 婚姻費用分担調停の迅速な適正化

直近の源泉徴収票などの客観的な収入資料を提出し、実収入に基づく適正な算定表ベースの金額を主張し、裁判所および相手方を説得した結果、正当な金額で早期に調停を成立させることができました。

2. 親権問題の整理と早期解決への方針転換

離婚調停において、当初Aさんは子どもへの深い愛情から「共同親権」の形を求めて強く主張していました。しかし、妻側は頑なに単独親権を譲らず、議論は完全に膠着状態に陥りました。

親権争いが長期化すれば、調停が不成立となって裁判へと移行し、解決までに年単位の時間を要する可能性が高くなります。その間、婚姻費用の支払い義務は毎月発生し続け、経済的消耗を強いられることになります。

 そこで弁護士から、長期化のリスクや婚姻費用負担の継続という現実的なデメリットを丁寧に説明し、Aさんとともに最善の着地点を模索しました。その結果、依頼者は「経済的負担からの早期解放と新生活への再出発」を最優先とし、妻に親権を譲る決断をされました。

3. 減収後の収入を反映させた養育費の獲得

親権の合意後、養育費の金額が激しい争点となりました。妻側は、依頼者が過去に得ていた「減収前の高い収入」をベースにした養育費の支払いを強硬に要求してきました。

これに対し、当方は、減収に至った正当な経緯・事情(勤務先の給与体系改定や職種変更等、やむを得ない事情)を具体的に書面で詳述しました。あわせて直近数か月分の給与明細等を提出し、現在の減収状態が一過性の作為的なものではなく、客観的な実情であることを説得的に立証しました。 その結果、妻側の要求額ではなく「減収後の実収入をベースに算出した金額」に極めて近い水準で合意をまとめることに成功しました。

4. 面会交流と財産分与の取り決め

親権を譲る一方で、父子の関係性を維持するために面会交流の頻度・実施方法・連絡手順を具体的に条項化しました。さらに、双方の預貯金等を整理したうえで公平な財産分与の清算条項を定め、調停条項を完成させました。

本事例の結末

最終的に、調停離婚が成立しました。

養育費についてAさんの現在の経済状況に即した適正な金額に抑えることができ、過大な経済的負担を回避しました。また、定期的な面会交流のルールも確保でき、親権の対立による泥沼化を避けて早期に新しい生活へ踏み出すことができる結果となりました。

本事例に学ぶこと

①感情的な対立と「早期解決の経済的メリット」の天秤

親権への思い入れから協議が膠着することは珍しくありません。しかし、親権を争って調停や訴訟が長期化すれば、その間「婚姻費用」を支払い続けなければならず、経済的な損失が膨らみます。本事例のように、「何を守り、どの時点で方針転換を図るか」という戦略的な損得勘定を冷静に見極めることが、結果として依頼者の生活を早期に安定させる鍵となります。

②養育費における「減収」の立証には説得的な証拠が不可欠

相手方は過去の高収入時を基準に請求してくる傾向があります。これに対抗するには、単に「収入が下がった」と口頭で主張するだけでは納得させられません。減収の客観的理由(会社の業績、健康状態、勤務形態の変更等)と最新の収入証拠資料を論理的に組み立てて提示することが、適正な算定を勝ち取る決定打となります。

③弁護士が客観的視点で伴走する重要性

離婚問題の当事者同士では感情的になりやすく、落としどころを見失いがちです。弁護士が法的な見通しと経済的合理性を示しながら交通整理を行うことで、不利な条件を回避しつつ、納得のいく早期解決を実現することが可能です。

弁護士 安田 伸一朗