はじめに

民法第770条1項1号は不貞行為を離婚の原因として挙げており、配偶者の一方に不貞行為が認められれば、離婚の成立が認められると考えて差し支えありません(双方が不貞行為をしていた場合は、別途検討が必要になります)。

不貞行為とは

では、不貞行為とは、どのような行為を意味するのでしょうか。
法律の解説書は、配偶者のある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係(性交渉)を結ぶことをいう、と解説しています。
そのため、同意に基づかない強制性交の事例や、配偶者の同意を得ない配偶者以外の者のとの間での人工授精の事例は、不貞行為に該当しないと考えられています(もっとも、同意のない人工授精は不貞行為とは別の理由で離婚の原因になるかもしれません)。
他方、1回限りの性交渉でも不貞行為には該当し、売春をする人と性交渉をしたような場合や、配偶者が売春をしたような場合であっても裁判所は不貞行為を認めています。

不貞行為があった場合にもかかわらず離婚を認めないことには裁判所は慎重

次に、民法第770条第2項は、不貞行為が認められる場合であっても、婚姻を継続することが相当と認める場合は、離婚の請求を棄却することが出来ると定めています。
もっとも、法律の解説書は、不貞行為は民法第770条第1項が離婚の原因の典型例として定めているので、離婚の成立を認めないための民法第770条第2項の適用は慎重に判断すべきであると解説しています。
実際に、最高裁判所は、妻の不貞行為が婚姻を破綻に導いた事実を認めながら民法第7 70条第2項で夫の離婚請求を棄却するには、それを肯定するに足りる特段の事情の存在を審理判断すべきであると判断しています(最高裁判所昭和38年6月4日判決家月15巻9号179頁)。

そして、ある裁判例は、不貞行為を配偶者が許したことは、民法第770条第2項を適用する一つの資料となるが、離婚請求権を消滅させるものではないと判断していますし(東京高裁昭和34年7月7日家月11巻10号90頁)。
また、妻の不貞行為をいったんは許し、夫婦関係は回復したが、夫はその後もなお不貞を疑って妻を責めたため、妻は性関係を拒否して子を連れて家出し、もはや夫婦関係は破綻して回復の見込みがない場合、信義誠実の原則に照らしても妻の離婚請求は許されると判断した裁判例もありますので(東京高裁平成4年12月24日判決 判時1446号65頁)、民法第770条第2項の適用に裁判所は相当慎重であることがわかります。

不貞行為の証拠

次に、どのような証拠があれば不貞行為の存在が認められるかについて説明をさせて頂きます。おおむね次のようなものが挙げられます。

探偵事務所などの調査報告書

一番詳細かつ決定的な証拠を得られる可能性が高いものです。
例えば、配偶者が不貞相手とラブホテルに入って、そこから出てくる写真などであれば、決定的です。

携帯電話等のLINEやメール

配偶者と不貞相手との間で、LINEやメールのやりとりをしているケースは多いです。実際、裁判などにおいても、メールのやりとりが証拠として提出されることも多くあります。
しかし、単にメールがあればよいというわけではなく、その内容が重要です。不貞行為=性行為があったことを前提とするようなやりとりがなされている必要があります。
このような疑わしいメールは、携帯電話の画面を写真で撮っておいたり、自分の携帯電話などに転送したりして、証拠化するようにしましょう。
なお、いつ、誰から誰に送ったのか明らかにする必要がありますので、やりとりした年月日、日時と、送受信相手が分かるようにしておくべきです。携帯電話に愛称などで登録されている場合には、やりとりの相手が、問題となっている不貞相手であることを特定しなければなりません。
そこで、電話帳やメッセージ内のやりとりの中などで、その送受信相手の本名や住所など個人が特定できる情報が記録されていれば、そのような情報もあわせて証拠としてとっておくことが重要です。

配偶者の証言の証拠化

配偶者に問い詰めたときに、自ら不貞行為の事実を認めることがあります。
しかし、いったん認めたとしても、いざ裁判などとなれば、「そんなこと言っていない」と主張されてしまいますので、全く意味がありません。
そこで、そのような「言った/言わない」を防ぐため、配偶者の証言を録音しておくことが考えられます。
録音する内容としては、単に「浮気しました」では足りません。できるかぎり具体的な内容を録音するようにしましょう。

写真

写真は、SNSなどで公開されていなくとも、携帯電話などに保管されている場合があります。中には、配偶者と不貞相手とが性交渉を行っている様子そのものを撮影した写真が保存されている場合もあります。そのような写真は、不貞行為の事実を示す極めて強い証拠になりますので、自分の携帯電話などに転送したり、写真を表示した画面を写真撮影したりするなどして、保管しておくようにすべきです。

SNSなどのやり取り

フェイスブックやツイッターなどのSNS上のやり取りやその中の写真などが不貞行為の証拠となることもあります。
特に、フェイスブックのアカウントは実名であることがほとんどですので、不貞相手も特定しやすくなります。

以上の通り、ご案内をさせて頂きます。不貞行為を理由に配偶者に対して離婚を請求すべきか否かをお悩みの場合は、一度当事務所へご相談をして頂くことをご検討頂けますと幸いです。

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