財産分与と税金(所得税・住民税)

財産分与で、(元)妻に不動産や株式を譲渡した場合に、譲渡所得税はかかるのでしょうか

財産分与は、実質的な共有物の清算であり、共有物の分割と同列に扱うべきように思われます。そのため、「譲渡」にはあたらないと考えるのが自然に思えます。しかし、所得税法上下記の通り定められており、譲渡所得税が課されることとなってしまいます。

所得税基本通達 33-14 財産分与による資産の移転

民法第768条《財産分与》(同法第749条及び第771条において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、その分与をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。

したがって、財産分与時の時価が、その資産を取得したときの価額より高くなっていた場合には、譲渡所得税及び住民税が課されることになります。

判例上もこの問題について、下記の通り判示しています。

「財産分与に関し右当事者の協議等が行われてその内容が具体的に確定され、これに従い金銭の支払い、不動産の譲渡等の分与が完了すれば、右財産分与の義務は消滅するが、この分与義務の消滅は、それ自体一つの経済的利益ということができる。したがつて、財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、分与者は、これによつて、分与義務の消滅という経済的利益を享受したものというべきである。してみると、本件不動産の譲渡のうち財産分与に係るものが上告人に譲渡所得を生ずるものとして課税の対象となる」(最判昭和50年5月27日民集29巻5号641頁)

このように、財産分与にあたっては、当該資産の取得価額と譲渡時の時価とを比較し、価値が上昇しているかどうか確認した上で、財産分与の内容を決める必要があります。特に、不動産を購入して5年以内であり、地価が大きく上昇した、等という事情がある場合には、短期譲渡所得として、所得税率30.63%、住民税率9%と、税金額は非常に大きくなるため注意が必要です。