いわゆるDV防止法でも、「配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合女性であ」るとされていますが、決して「DV被害者=妻」に限られるわけではなく、妻から被害を受ける夫、というDVも少なからず存在します。男性が被害者だからといって、決して暴力が許されるものではありません。今回は妻からのDVに悩む男性のために知っておいてほしい知識について説明します。
妻からのDV被害で悩む男性に知っておいてほしいこと
男性がDV被害で悩んでいるケースは、決して少なくない
近年、「男性のための法律相談」を自治体等で実施しているということもあり、その相談の中で割合が最も高いのは「人間関係」であるケースが多いようです。しかし、それ以外にも「DV」について悩んでいるという件数も数%の割合で見られます。
後述のように、男性がDV被害を申告しづらいという風潮においては、実際の被害件数はもっと多い割合であるかもしれません。
男性の被害申告の難しさ
相談機関などの少なさ
「女性向けの法律相談」という機会は、自治体等でも比較的多く、女性がDVや離婚問題、ひとり親家庭等といった内容について相談ができることも少なくありません。
これに対して、「男性向けの法律相談」という枠組みは女性向けのそれに対して少ないのが実情といえます。そのため、なかなか男性が、男性特有の相談という意味で話が出来る機会は少ないと考えられます。
ジェンダーバイアスの問題
「男性は体力的に女性より優れている」「男なら弱音を吐くな」などというジェンダーバイアスによって、DV被害を受けている男性も、「妻(女性)から被害を受けている」ということが言い難い状況を作っている場合があります。
広義のDVにはモラハラも含まれること
DVの中身としては、様々な形態の暴力がありえ、典型的には身体的な暴力がこれに当たりますが、精神的な攻撃、性的な攻撃、そして経済的な攻撃などもあります。
そして、精神的な攻撃とは「心無い言動等により、相手の心を傷つけるもの」となりますの、人格を否定するようなモラハラ行為も、DVに当たる場合があるのです。
夫婦間で体力的な差があったとしても、精神的な攻撃はその差とは関係なくなされるものですから、決して男性だけが加害者とはなりえません。男性も、女性も加害者たりうるものです。
DVを繰り返す妻との関係をどうするか
夫婦関係の見直し
DV加害者たる妻に、DVの自覚が生じ、それを改善する余地があるのであれば、夫婦関係を解消する必要まではないかもしれません。
近年、DVの加害者に対する治療プログラムを設けている医療機関などもありますので、加害者本人に受診の意向があるのであれば、それを受けてもらうという選択肢もあるでしょう。
逆に、「妻がDV加害者という自覚を持てない」、あるいは「持っていてもそれを改善する意欲がない」ということであれば、夫婦関係の解消、つまり離婚も考えなければなりません。
自覚の無い加害者に対して
DV加害者は、自身が「DV加害者である」という認識を持っていないことがほとんどです。この認識を持てない理由として、「自分の言動を客観視できない(精神的な問題による認知の歪みがある場合を含む)」というケースもあれば、「自分の言動を正当化してしまう」というケースもあります。
DVを否定されるうちの多くの場合、後者の「正当化」が見られるかと思いますが、「被害者(夫)が〇〇だから、自分はそれを注意しているだけ」「夫は悪いことをしたのだから、自分はそれに対して怒るのも当然だ」などと主張するのです。
仮に、被害者(夫)に何らかの落ち度があったとしても、その落ち度に対して暴力を振るっても許されるわけではありません。たとえば、被害者が不貞を働くなどの行為があったとしても、それはその不貞を働いた相手に慰謝料等を請求する根拠とはなりえても、暴力を振るっていいことにはなりません。
DVの証拠について
DVを否定された場合、その加害者の言動や被害者自身の損害などを証拠としておく必要があります。身体的な暴力であれば、分かりやすい証拠として…
写真
録音・録画
メール(被害状況を第三者に相談したもの・加害者と被害者でのやり取り 等)
SNSなど
日記・スケジュール帳
などがありますが、精神的な暴力(モラハラ)についても、これらの証拠が「DVの存在があったと評価させるもの」となる可能性はありますので、とっておくことをお勧めします。
男性としての悩み
上記のとおり、ジェンダーバイアスなどの影響により、男性が妻からのDV被害について相談できる機会は少なく、また実際に「妻からの暴力ぐらい、自分で防衛できるはず」などという心無い言葉を投げかける人もいるかもしれません。残念ながら、警察などでも妻からのDV加害に対し、抵抗をした夫の防衛行動を「夫のDV」とされてしまうケースも、存在しないわけではありません。
しかし、今後真の男女平等が進んでいくことによって、はそのような「女性はDV被害者、男性はDV加害者」という一方的な決めつけも、徐々に改められていくのではないかと考えられます。そのためにも、妻からのDVで悩んでいる男性は、決して「自分は男性だから」という理由だけで公的機関や弁護士等に相談を躊躇することなく、ご自身のお悩みを相談し、社会的な夫側のDV被害について認知をしてもらうことが必要だろうと思います。
特に、弊所では男性からの離婚相談、「妻からのモラハラや暴力等を受けて結婚生活に悩んでいる」というケースも複数扱っておりますので、遠慮なくご相談いただければと存じます。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。