有責配偶者への婚姻費用支払について

別居している妻に対し、夫は毎月婚姻費用を支払わなければなりません。

夫としては、妻が身勝手な理由で家を出ていったのに、妻から生活費(婚姻費用)を請求されることに不満を覚える方も多いのではないでしょうか。

しかし、婚姻費用分担義務は法律で定められた義務であり、支払義務を免れることはできません。

例外的に、妻の不倫・不貞行為など、妻の有責行為によって婚姻関係が破綻した場合には、裁判例上、婚姻費用を支払わないことが認められることがありま

有責配偶者である妻が、夫に対し、婚姻費用を請求することは、信義則又は権利濫用によって許されないと判断されています。

「相手方(妻)は,Fと不貞に及び,これを維持継続したことにより本件婚姻関係が破綻したものというべきであり,これにつき相手方(妻)は,有責配偶者であり,その相手方(妻)が婚姻関係が破綻したものとして抗告人(夫)に対して離婚訴訟を提起して離婚を求めるということは,一組の男女の永続的な精神的,経済的及び性的な紐帯である婚姻共同生活体が崩壊し,最早,夫婦間の具体的同居協力扶助の義務が喪失したことを自認することに他ならないのであるから,このような相手方(妻)から抗告人(夫)に対して,婚姻費用の分担を求めることは信義則に照らして許されないものと解するのが相当である。」

(福岡高裁宮崎支部決定平成17年3月15日)

「別居の原因は主として申立人である妻の不貞行為にあるというベきところ,申立人は別居を強行し別居生活が継続しているのであって,このような場合にあっては,申立人は,自身の生活費に当たる分の婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず・・・」

(東京家裁審判平成20年7月31日)

もっとも、有責配偶者である妻が、子どもを連れて家を出た場合などにおいては、妻の生活費部分の婚姻費用支払義務がないとしても、子どもの養育費相当部分については支払義務は残ります

上記の東京家裁審判平成20年7月31日によれば、

「ただ同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまるものと解するのが相当である。・・・未成年の子の実質的監護費用額を算定するに当たっては,申立人と相手方の総収入を元に,公租公課を税法等で理論的に算出される標準的な割合により算出し,職業費及び特別経費を統計資料に基づいて推計された標準的な割合により算出してそれぞれ控除して基礎収入の額を定め,その上で,相手方と子が同居しているものと仮定すれば子のために充てられていたはずの生活費の額を生活保護基準及び養育費に関する統計から導き出される標準的な生活費指数によって算出し,これを申立人と相手方の基礎収入割合で按分し,相手方の分担額を算出するのが相当である。」

と判断されています。

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