
紛争の内容
公務員をしているAさんは、主婦であるBと5年前に婚姻し、3歳の娘が一人いました。
妻は娘が生まれて以降、Aさんの一挙手一投足に文句をつけるようになりました。
AさんとBとの口論は日常茶飯事になっていましたが、ある時口論の中でBが極度の興奮状態となり、Aさんに暴力を振るうまでに至りました。
Aさんは打撲の怪我を負いましたが、娘のためにも離婚までは踏み切れず、Bが娘を連れて実家に帰る、という形で冷却期間を置きました。
しかし、Bは離婚することを強行に求め、弁護士を立ててAさんを相手方として婚姻費用の支払と離婚を求め調停を申し立てました。
交渉・調停・訴訟等の経過
当初はBは暴力を振るった行為自体は否定しなかったものの、その暴力はAさんの言動のせいで振るってしまったものだ、などと自分の行為を正当化し、逆に慰謝料を請求するという状況でした。また、財産分与の請求もしていました。
しかし、Aさんが受けた暴力の内容(診断書、ケガの写真など)を調停で資料として提出し、Bの行為が決して正当化できるものではないこと、そして財産分与をするといってもAさんはB及び娘との生活を成り立たせるため、生活費の不足分を借金するほどで、分与すべき財産などないことを主張しました。
本事例の結末
結局、こちらに暴力に至った非はないこと、財産も存在せずAさんの借金がやむを得ないものであったことをBも認め、婚姻費用の請求は、Bの慰謝料支払い義務と相殺して、B自身も暴力が離婚原因になったことを認めました。
Aさんは、離婚自体は本来望んではいなかったものの、娘との面会交流もできるようになり、離婚後も実施の合意ができたため、離婚に応じることとし、調停は成立しました。
本事例に学ぶこと
近年は、夫が妻から暴力を受け、離婚を考える、というケースも見られるようになってきました。
男性だからDV被害者であるといえない、ということはありません。DVに至った経緯や、そのDVの事実を踏まえどのように夫婦や家族の関係を考えるべきか悩んだときには、是非弁護士に相談していただきたいと思いました。
弁護士 相川 一ゑ