【離婚解決事例】経営者の夫が「財産分与2000万円」の請求を覆し、資産を守り抜いた逆転劇!

経営者の方の熟年離婚は、財産分与が極めて複雑かつ高額になりがちです。「会社の資産」と「個人の資産」の線引きが曖昧なことも多く、相手方から過大な請求を受けてしまうケースが後を絶ちません。

今回は、妻から離婚調停を申し立てられ、自宅不動産に加えて2000万円近い財産分与を請求された経営者の夫が、当事務所の的確な法的サポートにより、資産の大部分を守り抜き、有利な条件で離婚を成立させた事例をご紹介します。

① 紛争の内容:経営者の夫に向けられた、過大な財産分与請求
ご依頼者様(Tさん・男性・会社経営者)は、妻Uさんから離婚調停を申し立てられました。Tさんは以前、Uさんとの婚姻費用調停の際に当事務所にご依頼いただいた経緯があり、今回も迷わず当事務所に代理人活動を依頼されました。

調停において、妻Uさん側の要求は非常に強硬でした。

  • 現在Uさんと成人の子が住む、住宅ローンなしの自宅不動産の分与。
  • 上記に加えて、現金で2000万円の財産分与。

Uさん側は、Tさんが会社経営者であることから、多額の個人資産を保有していると見込んでおり、「夫名義の財産は全て共有財産として2分の1に分けるべきだ」と主張していました。

しかし、Tさんの資産状況は複雑でした。夫名義の預金には会社の運転資金が混在しており、保有株式の多くは、会社設立時に親から贈与されたものでした。これを単純に共有財産として計算されては、会社の経営基盤そのものが揺らぎかねません。Tさんは、この不当な状況を打開すべく、当事務所と共に戦うことを決意しました。

② 交渉・調停の経過:弁護士による「聖域」の徹底的な立証と反撃
当職は、Tさんを徹底的に防御し、かつ現実的な解決を目指すため、以下の三つの戦略を軸に調停を進めました。

戦略1:共有財産の徹底的な切り分けと「特有財産」の立証
まず、財産分与の対象となる「共有財産」を正確に洗い出し、それ以外の「特有財産(分与対象外の財産)」を切り分ける作業に注力しました。

  • 会社の資産との分離: Tさんと顧問税理士にも協力を仰ぎ、会社の決算書や個人の確定申告書、通帳の入出金履歴などを精査。夫名義の預金であっても、実質的に会社の運転資金として使われていた部分を特定し、これは分与対象外であると主張しました。
  • 株式の由来の立証: 保有株式が、婚姻中にTさんの才覚で得たものではなく、親からの贈与によるものであることを立証するため、当時の贈与契約書や親族の証言、資本金の出どころが分かる資料などを収集。これも「特有財産」であると強く主張しました。

戦略2:妻側財産の徹底的な開示請求と「調査嘱託」の活用
財産分与は、夫婦双方の財産を開示して初めて公平な議論ができます。同居中、家計は妻Uさんが管理しており、Uさん名義の財産も相当額あるはずでした。しかし、Uさん側は自身の財産の開示に消極的でした。
そこで、当職は家庭裁判所に対し「調査嘱託」を申し立てました。これは、裁判所を通じて金融機関に照会をかけ、相手名義の口座情報(残高や取引履歴)を開示させる強力な法的手続きです。その結果、Uさんが夫に隠していた複数の預金口座の存在が明らかになり、交渉のパワーバランスを大きく引き戻すことができました。

戦略3:不動産をカードにした戦略的交渉
Uさん側の「2000万円」という請求の根拠は、不動産を含めたTさんの全資産を過大評価したものでした。そこで当方は、不動産の価値を不動産鑑定士により適正に評価させました。その上で、
「Tさんの特有財産や、調査嘱託で判明したUさんの財産を考慮すれば、共有財産はUさん側が主張する額より大幅に少ない。その上で、資産価値のあるローンなしの不動産を分与することで、財産分与の大部分は完了する
というロジックを調停委員に丁寧に説明し、説得しました。

③ 本事例の結末:不動産分与のみで、2000万円の支払いを回避!
当方の徹底した立証と戦略的な交渉の結果、調停委員もこちらの主張の正当性を理解し、Uさん側を説得。最終的に、以下の内容で調停離婚が成立しました。

  • TさんとUさんは離婚する。
  • 財産分与として、TさんはUさんに対し、自宅不動産の所有権を分与する。
  • Uさんが当初請求していた2000万円の現金での財産分与は、一切不要とする。

Tさんは、会社の経営基盤である現金や株式を守り抜き、不動産の分与のみで離婚を成立させることができました。これは、当初の請求内容から考えれば、まさに「逆転勝利」と言える結果でした。

④ 本事例に学ぶこと:経営者の離婚は、専門家と共闘する総力戦
本事例から学べることは以下のとおりです。

  1. 経営者の財産分与は専門知識が不可欠
    会社の資産と個人の資産の区別、非上場株式の評価、特有財産の立証など、通常の離婚案件とは次元の違う専門性が求められます。経営者の離婚は、この分野に強い弁護士に依頼することが絶対条件です。
  2. 「特有財産」の立証が勝負の分かれ目
    結婚前の資産や、親からの相続・贈与で得た資産は分与の対象外です。これをいかに客観的な証拠で示せるかが、資産を守る上で最大の鍵となります。
  3. 守りだけでなく「攻め」も必要(調査嘱託の活用)
    相手の財産を明らかにすることも、公平な解決には不可欠です。相手が開示を拒む場合は、「調査嘱託」という強力な武器があることを知っておくべきです。
  4. 安易な妥協はしない
    相手からの過大な請求に対し、言われるがままに妥協する必要は一切ありません。法的な根拠に基づき、守るべきものは断固として守り抜く姿勢が重要です。
  5. 経験豊富な弁護士を「参謀」にする
    困難な案件ほど、弁護士との信頼関係と緊密な連携が求められます。Tさんのように、過去に依頼して信頼できる弁護士を「参謀」として再び起用することは、スムーズな問題解決に繋がります。

会社の資産とご自身の未来を守るため、離婚問題に直面した経営者の方は、一刻も早く専門家である弁護士にご相談ください。あなたの状況を正確に分析し、最善の戦略をご提案いたします。

弁護士 時田 剛志