
離婚を真剣に考え始めたとき、多くの方が直面するのが「そもそも自分たちの理由は、法律上の離婚原因として認められるのだろうか」という不安です。
「性格が合わない」「価値観が違いすぎる」「相手の親族とうまくいかない」……日々の生活の中で積み重なるストレスは深刻ですが、相手が離婚に同意してくれない場合、法律が定める「正当な理由」がなければ、裁判で離婚を勝ち取ることはできません。
本コラムでは、どのような理由があれば法的に離婚が認められるのか、日本の法律が定める5つの離婚原因を中心に、弁護士が分かりやすく解説します
離婚の請求方法

まず前提として、離婚する方法は大きく分けると以下のとおりです。
協議離婚
相手方が離婚に関しての話し合いに協力的であって、かつ合意を得ることができそうな場合、裁判所の手続きを通さずに当事者間で離婚や養育費、親権、財産分与などの離婚条件について協議することが柔軟かつ早期に離婚をすることができます。
調停離婚
相手方が離婚の協議に応じてくれないような場合や条件で折り合いがつかなそうな場合、家庭裁判所に夫婦関係調整調停(離婚)を申し立てることが有効です。
離婚を調停で行うメリットとしては、間に中立的な調停委員を挟むことで合意ができやすくなること、相手と顔を併せなくてすむこと、調停委員を通じて財産の開示をお願いすることができることといったメリットがあります。
裁判離婚
調停によって、離婚の合意ができなかった場合、調停は不成立となります。
この場合に離婚の話し合いを進めるには、家庭裁判所に離婚訴訟を提起する必要があります。
離婚訴訟は、専門性が高く弁護士抜きで対応するのは難しいため多くのお金がかかることに加え、多くの手間、時間もかかってしまいます。
一方でこちらの請求が認められれば相手方の意思に関係なく離婚が認められますので、離婚の合意を得ることが難しい状況で、それでも離婚をしたいと考えている場合、離婚訴訟を提起して裁判離婚を目指すことになります。
相手方がかたくなに離婚することを拒んでいる場合、裁判離婚で離婚が認められるためには、民法770条1項に規定された離婚原因のいずれかが存在することが必要です。以下で、離婚原因について詳しく解説します。
配偶者に不貞行為があったとき

「不貞行為」とは、自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。そして、性行為を推認する事実として、ラブホテルの利用、2人だけの宿泊を伴う旅行、性行為があることを前提とした親密なメッセージのやり取りなどが考えられます。
また、類型的には不貞行為に当たらない行為のうち、配偶者以外との不適切な交流についても、その行為態様、内容、経緯等に照らして婚姻関係の維持という権利又は法律上保護に値する利益を侵害する場合には、「婚姻関係を継続し難い重大な事由がある」という離婚原因に当たり得ます。
不貞行為をした側からの離婚請求が認められるか
不貞行為等によって婚姻関係を自ら破綻させた配偶者(有責配偶者といいます)からの離婚請求は、かつての裁判例では原則として認められていませんでした。しかし、現在の判例では、一定の要件を満たす場合には認められています。
判例では、不貞行為をした側からの離婚請求が認められるためには、主に次の3つの要件を身としていることが必要とされています。
- 夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
- 夫婦の間に未成熟子が存在しないこと
- 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれるなど、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと
これらの要件を満たす場合、有責配偶者からの離婚請求が信義誠実の原則に反しないとされ、離婚が認められるとされています。以下では、各要件について詳しく解説します。
夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
一般的に有責配偶者のいない場合で「離婚を継続し難い重大な事由」といえる夫婦の別居期間は、3~5年程度と言われています。しかし有責配偶者の場合、別居期間が相当の長期間に及んでいるといえるためには、7~10年以上の別居が必要とされています。なお、単身赴任などは別居には該当しません。
夫婦の間に未成熟子が存在しないこと
18歳を超えても学生であったり、障害を抱えていたりする子の場合には、依然として親のサポートが必要です。そこで、未成熟子とは、必ずしも年齢だけで判断されるものではなく、経済的・社会的に自立していない、親の扶養を必要とする子を言います。
相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれるなど、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと
有責配偶者からの離婚請求は、離婚によって有責配偶者でない側の配偶者の生活が困窮しないか、精神的、経済的にも厳しい状況にならないか等が総合的に考慮されます。
例えば、有責配偶者側でない配偶者が難病を抱えており離婚をした後、生活を送っていく目途が立たないような場合は、離婚により、精神的、経済的、社会的に極めて厳しい状態に置かれると想像できます。
このように、有責配偶者側でない配偶者が離婚によって過酷な状況におかれてしまうような場合には、有責配偶者側が経済的に援助を申し出るなどして、離婚後も一方の配偶者が生活に困窮しないように約束しなければ、離婚が認められないケースもあります。
配偶者から悪意で遺棄されたとき

「悪意の遺棄」とは、婚姻共同生活の廃絶を企図し、又はこれを認容する態度で、夫婦の同居・協力・扶助義務に違反してこれらを履行しないことをいいます。そして一定の期間「遺棄」されている期間が継続されていることも必要とされています。同居・協力・扶助義務はそれぞれ夫婦の本質的な義務ですので、いずれか一つを欠く場合でも遺棄に当たります。そのため、配偶者からの同居拒否や生活費の不払いによっても悪意の遺棄に該当する可能性があります。
もっとも、遺棄に該当する行為があったとしても、正当な理由がある場合には、悪意の遺棄に該当しないと判断されます。例えば、別居しているものの、仕事の関係で単身赴任する必要があるなど同居できない理由がある場合などが考えられます。
配偶者の生死が3年以上明らかでないとき

「配偶者の生死が3年以上明らかでない」とは、配偶者と最後に連絡を取ってから3年以上、全く連絡が取れず、生死不明の状態が続いていることを意味します。単なる行方不明であるというだけでは足りず、生死不明の状態であることも必要とされています。
3年以上の生死不明が離婚原因の1つと規定されているのかというと、配偶者が生死不明である場合には、共同生活を送るという婚姻の目的を達成することはできないため、裁判での離婚請求を認める必要があるからです。
また、3年以上の生死不明を理由に離婚が成立した後、配偶者の生存が判明したとしても、確定した離婚判決は取消しにはならず、婚姻関係も復活しません。
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

一般に「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態と解されています。
婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態といえるかは、婚姻中の当事者双方の行為、態度、婚姻継続の意思の有無、子の有無・状態、双方の年齢、別居の有無、その期間の長短等の一切の事情を考慮して客観的に決められます。
例えば、3~5年くらいの別居期間があると、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態と判断されることが多いです。
離婚が認められにくいケース

以下の理由では、なかなか離婚が認められにくいことが多いです。
性格の不一致
価値観の違いや金銭感覚のずれ、子供の教育方針などの違いによって、離婚を考える方も多いと思います。しかし、性格の不一致は、民法の離婚原因には当たらないため、相手方が離婚を拒んでいる場合、性格の不一致を理由に離婚することはできません。
もっとも、性格の不一致が原因で、今後も改善の見込みがないといえるくらい婚姻関係が破綻している場合、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当し、裁判離婚が認められる可能性があります。
まとめ

- 離婚には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚といった方法がある。
- 相手方がかたくなに離婚に応じない場合、裁判離婚をするほかなく、裁判離婚が認められるためには、民法で定められた離婚原因が存在していることが必要である。
- 類型的には不貞行為に当たらない行為のうち、配偶者以外との不適切な交流についても、その行為態様、内容、経緯等に照らして婚姻関係の維持という権利又は法律上保護に値する利益を侵害する場合は離婚原因となり得る。
- 有責配偶者側からの離婚は、7~10年程度の別居期間、未成熟子の不存在、離婚によって相手方が過酷な状況に置かれないことという要件を満たす場合に認められる。
- 「悪意の遺棄」とは、婚姻共同生活の廃絶を企図し、又はこれを認容する態度で、夫婦の同居・協力・扶助義務に違反してこれらを履行しないことをいい、同居の拒否や生活費の不払いがこれに当たり得る。
- 「配偶者の生死が3年以上明らかでない」とは、配偶者と最後に連絡を取ってから3年以上、全く連絡が取れず、生死不明の状態が続いていることを意味する。
- 「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態をいう。
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