
これまでの民法では、父母が婚姻中は父母が親権を共同して行使できるのに対し、離婚後は父母の一方のみを親権者と定めると規定されていました。しかし、この度成立した新民法では、離婚後も単独親権だけではなく共同親権も選択できるようになりました。今回は、協議離婚に伴い親権者の指定がどのような手続によって決められることになるのか等、新たな親権者の定めについての制度概要を、説明したいと思います。
協議離婚の際に、親権者の指定をする場合の流れについて
親権について定めるタイミング
新民法の定め

これまでの民法では、離婚後の子の親権者は、父母のいずれかに定めなければならず、この定めができないときは、離婚もできない、という法の立て付けになっていました。
これに対して、新民法においては離婚時に親権者に関する父母の合意ができていなくても、条件を満たせば、離婚の届出を受理してもらうことはできることになりました。その条件というのが、「親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされていること」となっています(新民法765条1項2号)。
したがって、協議離婚をするとしても、必ずしも離婚成立時に親権者が決まっていなくても良いことになったのです。
ただし、これはあくまでも協議離婚に関する定めであって裁判離婚をする場合には裁判官が親権者の定めをせずに離婚判決をすることはできません。また、調停離婚も同じで、親権者を定めずに調停離婚又は調停に代わる審判をすることもできない、と考えられています。
離婚届の前に申し立てるべき「協議離婚に伴う親権者指定の調停・審判手続」とは
どのような判断に基づいて親権者を決めるのか

今回の法改正がなされる以前にも、離婚調停において親権者を定めなければいけない場面はありましたが、法改正後も親権者指定の判断の流れは変わるわけではありません。
すなわち、調停であれば、「当事者の合意」に基づいて親権者が定められますし、
審判であれば、家庭裁判所が、必要的単独親権事由(共同親権とすることがこの利益を害すると認められるような「父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれ」 あるいは 「父母が共同して親権を行うことが困難であること」)があるか、そのような事由がない場合は総合考慮で単独親権か共同親権かを決める、というものです。
調停手続・審判手続の留意点
申立時の留意点

既に述べているとおり、「協議離婚に伴う親権者指定の調停・審判」は申し立てられていること自体が協議離婚届出受理の要件ですので、離婚成立前に申立てがされる必要があります。
法律上、家庭裁判所は審判の手続において、申立人に対して相当の期間を定めて離婚したことを証する文書の提出を命ずることができ、申立人がこれに従わない場合は申立てを却下することができます。
調停・審判の申立後は、速やかに離婚届がなされることを想定しています。
もし申立段階において、裁判所が協議離婚の準備がどの程度できているかを確認しても早期に協議離婚をするとは認められない場合は、申立ての取下げを促されてしまうことも考えられます。
親権者指定の調停・審判の申立てがされた場合、家庭裁判所は、当事者の申請に基づいて事件係属証明書(調停等の申立が家庭裁判所に受理され、事件が家庭裁判所に係属していることを証明するもの)を発行します。
父母のいずれかは、その証明書をもって離婚届をし、その後、家庭裁判所に対して、離婚したことを証する文書として、離婚したことが分かる戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)の原本又は写しを提出することで、申立時の要件を満たすものと考えられます。
申立てを取下げるときの注意

親権者指定の調停・審判の申立後に離婚届が受理された場合、申立てが取り下げられてしまうと、離婚後の親権者の定めができていないことになります。そうすると、親権者未確定の子が生じることとなり、このような親権者が決まらない状態は子の利益を害すると考えられることから、親権者指定の調停・審判の申立ては、家庭裁判所の許可を得なければ取り下げることができません(新家事法169条の2, 273条3項)。
逆に言えば、家庭裁判所は、離婚の成立前であれば、申立ての取下げを許可することができると考えられます。
また、離婚の成立後であっても、子が成人したなど、親権者を指定する必要がなくなった場合は、家庭裁判所は、申立ての取下げを許可することができると考えられます。
離婚を証する文書の提出命令

親権者の指定の調停・審判を申し立てたものの、当事者が離婚届を出さない場合も想定されます。
このような場合、親権者指定の調停又は審判をすることができなくなってしまいます。そこで、家庭裁判所は、審判の手続においては、申立人に対して相当の期間を定めて離婚したことを証する文書を提出するよう命ずることができ、申立人が同期間内に提出しない場合は、申立てを却下することができるとされています(新家事法169条の3第1項・2項)。
調停手続の場合このような規定は設けられていないものの、家事事件手続法271条(調事件が性質上調停を行うのに適当でない 又は 当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたとして、調停をしないものとし、家事調停事件を終了させる)によって事件を終了させることも考えられます。
共同親権を認める場合はどのような審判主文になるか

単独親権とする主文は、これまでの民法下での表現と同様と考えられます。
これに対して共同親権を認める主文も新たに表現として生じることになります。共同親権を定める場合の審判の主文としては「未成年者の親権者を、申立人及び相手方と定める。」などとすることが想定されています。
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