
紛争の内容(ご相談前の状況)
「妻から、突然離婚を切り出され、慰謝料として1000万円を支払うよう要求されています」
憔悴した表情で当事務所にご相談に来られたのは、一人の幼いお子様を持つ男性でした。ご自身としては、夫婦関係に大きな問題はないと考えていた矢先の出来事で、まさに青天の霹靂でした。
妻側の要求は感情的かつ苛烈で、多額の慰謝料だけでなく、財産分与についても一方的な内容を主張。何より依頼者が心を痛めていたのは、「離婚したら、もう子どもには会わせない」と言わんばかりの妻の態度でした。
ご自身で話し合いを試みても、感情的な対立が深まるばかり。要求はエスカレートし、まともな話し合いができない状況でした。このままでは、法外な金銭を支払わされた挙句、愛する我が子との関係まで断たれてしまう。そんな絶望的な状況の中、藁にもすがる思いで当事務所の門を叩かれました。
交渉・調停・訴訟等の経過(当事務所の対応)
「感情的な要求には、法に基づいた冷静な交渉を」
ご依頼を受けた弁護士は、まず、相手方の感情的な要求と、法的に正当な権利とを明確に切り分けることから始めました。そして、怒りや焦りで混乱している依頼者様に対し、「大丈夫です。法的な観点から、一つひとつ着実に解決していきましょう」とお伝えし、交渉の全権を代理しました。
弁護士は、相手方が提示する1000万円という慰謝料について、過去の裁判例や法律上の算定根拠に照らし、法的な根拠に乏しい過大な請求であることを、相手方に対し冷静に、かつ毅然と主張しました。
同時に、依頼者様が「父親として、子どもの成長にこれからも関わり続けていきたい」という強い愛情をお持ちであることを、具体的な面会交流の希望として提示。単にお金の問題だけでなく、子の福祉の観点からも、父親との交流がいかに重要であるかを粘り強く説きました。
相手方の感情的な要求には正面から応酬せず、常に法律という客観的な物差しに当てはめて粛々と交渉を継続。これにより、次第に相手方も冷静さを取り戻し、現実的な話し合いのテーブルに着くことになりました。
本事例の結末(結果)
弁護士による冷静かつ迅速な交渉の結果、当初は泥沼化も予想された本件は、ご依頼からわずか3ヶ月という驚異的なスピードで、以下の内容を含む、依頼者にとって極めて有利な条件での協議離婚が成立しました。
慰謝料: 当初の1000万円という請求は完全に取り下げられ、転居費用などを含めた現実的な解決金の支払いで合意。
財産分与: 法的に適正妥当な範囲での分与に落ち着きました。
面会交流: 依頼者様の強い希望が通り、月2回程度の宿泊を伴う面会交流が約束されました。さらに、お子様の学校行事等への参加も妨げられないことが、書面で明確に合意されました。
養育費: 裁判所の算定表に基づいた標準的な金額で合意しました。
本事例に学ぶこと(弁護士からのアドバイス)
離婚協議において、相手方から感情的に法外な要求を突きつけられるケースは、決して珍しくありません。そのような時、ご自身で冷静に対応するのは至難の業です。
感情に感情で返さない
相手が感情的であればあるほど、こちらは法律と証拠に基づいて冷静に交渉を進めることが、早期かつ有利な解決への唯一の道です。
父親としての権利を諦めない
たとえ相手が「子どもに会わせない」と主張しても、親子の面会交流は子の福祉のための重要な権利です。本件のように、宿泊付きの面会交流など、具体的な形で父親としての権利を確保することは十分に可能です。
早期に弁護士に相談する
問題がこじれ、相手の要求がエスカレートする前に、早期の段階で弁護士にご相談いただくことで、交渉の主導権を握り、本件のようなスピード解決に繋がる可能性が高まります。
相手方の無理難題にお悩みの方は、決して一人で抱え込まず、離婚問題の交渉経験豊富な当事務所にぜひ一度ご相談ください。
弁護士 時田 剛志