婚姻前から保有していた預金を特有財産として財産分与対象から除外することができた事例

紛争の内容
依頼者の方は婚姻期間はそれほど長くありませんでしたが、婚姻前に相当程度の預貯金を保有していため、別居日を基準として二分の一にすると不利な財産分与をせざるを得ない状況でした。

交渉・調停・訴訟等の経過
調停手続の中で、相手方代理人からは当然のように財産分与基準日である別居日時点の預貯金残高を半分にする内容の財産を請求してきました。

そこで、こちらから、婚姻前から別居日に至るまで、全ての通帳履歴・取引履歴を取り寄せて開示し、機械的な動きしかないことを示しました。

本事例の結末
相手方は、こちらの主張を受け入れ、婚姻期間中に増加した部分のみをもって、財産分与をすることで解決することができました。

本事例に学ぶこと
婚姻前に保有していた普通預金や通常貯金については、婚姻後に金銭が出入する中で特有財産部分が希釈化され、特有財産部分と婚姻後に新たに形成された財産部分を明確に切り分けることができなくなるため、財産分与基準日残高をもって財産分与対象財産とするという考え方が一般的です。

しかし、本件のように、通帳の流れを追って希釈化されていないことを示すことで、原則的な考えを変えることも可能となります。

弁護士 平栗 丈嗣