離婚訴訟(裁判)となる場合の流れ

離婚訴訟(裁判)について

家庭裁判所に対して、他方配偶者を相手方として、離婚(ないし離婚条件の決定)を求めて起こす訴訟を離婚訴訟といいます。
離婚訴訟を起こすにはその前提として離婚調停を行っておく必要があり(調停前置主義)、例外的な場合を除き、いきなり離婚訴訟を起こすことはできません。
離婚訴訟では申立ての有無によりますが、離婚のみならず、親権者の指定、養育費、慰謝料、財産分与、年金分割等の離婚条件についても裁判所の判断を求めることができます。

離婚訴訟(裁判)の流れ

離婚訴訟を起こすために必要な書類

離婚訴訟を起こすためには離婚理由を示す証拠のほか、最低限、以下の書類が必要となります。

・夫婦の戸籍謄本
・離婚調停が済んでいることを示す書類(不成立調書または事件終了証明書、離婚調停を行った家庭裁判所で交付を受けます)

離婚訴訟はどこの家庭裁判所に対して起こすか(管轄)

離婚調停は他方配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申立てを行う必要がありましたが、離婚訴訟は夫婦いずれかの住所地を管轄する家庭裁判所に対して起こすことができます。
他方配偶者が実家に戻る等で遠方に住んでいるという場合には、離婚調停を行った家庭裁判所ではなく自分の住所地を管轄する家庭裁判所に対して離婚訴訟を起こすことができます。

訴状に記載する事柄

離婚訴訟は基本的に書面審理であるため、離婚訴訟を起こす際には自身の言い分を書面にまとめた訴状を家庭裁判所に提出する必要があります。
訴状には、婚姻後の経過、具体的な離婚事由の存在、交渉の経過等を記載し、それを証明する証拠を添付します。
離婚訴訟では、第三者である裁判官に、夫婦としてこれ以上の婚姻生活を送っていくことができない状態であるということを分かってもらわなければいけないため、具体的な離婚事由の存在については重点的に記載する必要があります。
他方配偶者に不倫やDVといった客観的に分かりやすい離婚事由がある場合はさておき、そうでない場合には他方配偶者のどのような言動により婚姻生活を継続することが難しいのかということを説得的に示さなければなりません。

実際の離婚訴訟の流れ

訴状等の提出

どこの家庭裁判所で訴訟を起こすかを決めた上で、その家庭裁判所に対して、訴状、証拠、戸籍謄本等の書類、手数料額に応じた印紙、郵便切手を提出します(郵送提出も可能です)。

家庭裁判所による形式的審査

訴状等の提出を受けた家庭裁判所は、訴状の体裁が整っているか、必要書類が揃っているか等の形式的な審査を行います。
この段階で家庭裁判所から訴状等の手直しや追加の書類の提出を求められることもあります。それがなされた場合には、家庭裁判所の指示に従い訴状の訂正や資料の追完を行います。

期日調整及び他方配偶者への訴状等の送達

離婚訴訟の初回期日(第1回期日)は離婚訴訟を起こした側(原告)と家庭裁判所との調整のもと決定されます。
訴状等の形式的審査が済んだ段階で家庭裁判所から期日候補日の打診がありますので、そこで初回期日の調整を行います。なお、初回期日は形式的審査等との兼ね合いで訴状等の提出から1~2カ月程度後に設定されることが一般的です。
初回期日が決定すると、離婚訴訟を起こされた他方配偶者(被告)に対して、訴状及び証拠とともに期日呼出状が送達されます。

答弁書の提出

他方配偶者に送達される期日呼出状には、離婚訴訟が起こされたこと、離婚訴訟の初回期日の日時、初回期日の1週間前までに訴状で記載された事柄に対応する答弁書を提出すべきこと等が記載されています。

答弁書は、訴状に記載された請求及び事実関係に対する認否(認める、否認する、知らない・わからない)及び他方配偶者の主張等により構成されます。
答弁書の提出期限は初回期日の1週間前とされていますが、期限を過ぎると一切反論ができなくなるというわけではありません。
遅くとも初回期日までに答弁書が提出されれば家庭裁判所はそれを前提に審理を進めることになります。

仮に初回期日までに答弁書が提出されず、他方配偶者から家庭裁判所に対して何らの連絡もない場合、家庭裁判所は訴状の記載及び証拠により離婚訴訟を起こした配偶者(原告)の請求を認めるべきか否かを判断することになります。

初回期日(第1回期日)

事前に家庭裁判所と調整した日時に初回期日が開催されます。
初回期日は家庭裁判所の法廷で実施され、訴状や答弁書の陳述(法廷で記載内容を読み上げたことにする扱い)及び証拠関係の確認(原本がある証拠については原本確認)が行われます。
その後、次回期日の調整や次回期日までの準備事項の確認がなされ、初回期日は終了します。

なお、離婚訴訟を起こされた他方配偶者(被告)が期日前に答弁書を提出していた場合には他方配偶者は初回期日に限り出頭しなくてもよいという扱いが許されています。
その場合、初回期日に出頭するのは離婚訴訟を起こした配偶者(原告)のみということになります。

初回期日はほとんどのケースで5~10分程度で終わってしまいます。

第2回期日以降

離婚訴訟の期日はおおよそ1~2か月に一度のペースで開催され、しばらくは、それぞれが相手方の提出した主張書面に対する反論書面を提出するという流れで進んでいきます。

双方に代理人がついている場合には、第2回以降の期日は弁論準備という手続に切り替えられ、法廷ではなく裁判所の準備室で行うことが多くなっています。そこでは、主張整理のほか、和解(話し合いによる解決)の方向性に関する議論がされることもあります。

和解期日

審理を進めていく中で和解の可能性が出てきたという場合には、主張・立証関係を一旦ストップして和解協議を行うための期日が開催されることがあります。
この場で離婚条件等の協議がまとまれば判決を待たずに和解成立ということで離婚訴訟は終了します。
その場合、和解成立日が離婚日となり、離婚条件等は家庭裁判所の作成する和解調書に記載されます。和解調書は判決書と同様の効力を持ちます。

尋問期日

期日における主張整理により当事者間の意見が食い違う争点が明らかとなり、その点に関する双方の主張が尽きた段階で、和解の可能性がないという場合には当事者に対する尋問(法廷で自身の言い分を質問に答える形で述べること)を実施します。
離婚訴訟においては当事者の証言も証拠の一つとなり、裁判官は尋問時の当事者の口ぶりや質問への答え方等によりその信用性を判断します。

代理人がついている場合には、自分の代理人からの質問→相手方の代理人からの質問→裁判官からの質問という順序で尋問が進んでいきます。

審理終結・判決

尋問後にその印象を踏まえ和解の打診がされることもありますが、それでも和解が難しいという場合には裁判官は審理を終結し(主張や証拠の提出を打切り)、その時点までに提出された主張や証拠をもとに判決を下します。

判決は離婚訴訟を起こした側(原告)の離婚等の請求が認められるか否かという観点からなされます。
原告の請求を認めない場合には「原告の請求を棄却する」との判決となり、原告の請求を認める場合には「原告と被告とを離婚する」等の判決となります。

審理終結となる期日において判決言渡し期日の指定がなされますが、判決言渡し期日は判決の結論部分のみが法廷で読み上げられるだけですので、必ずしも出頭する必要はありません(その場で判決の結論部分を確認したいという場合は別です)。
判決言渡し期日後に家庭裁判所から判決書が郵送されますので、判決の具体的理由については判決書をみて確認することになります。

判決後

自身の請求の一部または全部が認められず、判決の内容に不服があるという場合には高等裁判所に対して控訴をすることができます。
控訴は判決書を受け取った日の翌日から14日以内に家庭裁判所に対して控訴状を提出することにより行います。その期間を過ぎてしまうと判決が確定してしまいますので注意が必要です。
控訴状には取り急ぎ不服申し立てを行う旨記載すれば足り、判決のどの部分に不服があるのかを記載する控訴理由書の提出までは50日の猶予が与えられます。

離婚を認める判決が下され、当事者双方が不服申立期間内に控訴をしなかった場合、判決が確定し、その日が離婚成立日となります。

まとめ

今回は離婚に関する紛争が離婚訴訟(裁判)にまで発展した場合の流れについて解説しました。
離婚訴訟は結論が出るまでに1年以上を要することが多く、長丁場の戦いとなります。
また、離婚訴訟は基本的に書面のやり取りで進んでいくことになるため、自身の言い分を法律の要件に従って正確に書面に反映させる技術が要求されます。

離婚を切り出したが他方配偶者の反応からは離婚調停ではまとまらない気がする、離婚調停までは自分でやったがさすがに離婚訴訟は難しいのではないか等でお悩みの方は是非一度グリーンリーフ法律事務所までご相談ください。
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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 吉田 竜二
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