面会交流を拒否された場合の対処法とは?

このページは、面会交流を取り決めたい男性向けの記事です。

子どもとの面会交流(特に別居中の場合)を取り決めるには?

そもそも面会交流とは?

面会交流とは、離婚後又は別居中に、子どもを養育監護していない方の親が子どもと面会等を行うことをいいます。

時々面会交流は「離婚後」の話と誤解される方もいらっしゃいますが、離婚とはなっておらず、単に「別居中」という状況でも面会交流は行うことが可能です。

妻に対する請求方法は?

では、面会交流が行われない場合、どのような請求ができるでしょうか。

方法としては、家庭裁判所に対し、面会交流を求める家事調停又は家事審判を申し立てることができます。

注意していただきたいのは、離婚調停においては、離婚後の面会交流に事実上定めることができますが、面会交流について定めることなく離婚が成立した場合や、離婚に至る前の面会交流を実現させるためには、離婚調停とは別に面会交流に関する家事調停又は家事審判を申し立てる必要があります

なお、調停等で離婚が成立せず裁判になった場合には、離婚請求の附帯処分として面会交流の申立てをすることもできます

裁判所では面会交流についてどのように決めるのですか?

面会交流の可否については、子どもの事情、監護親、非監護親の事情、子と親との関係等様々な要素が考慮されます

子どもに関する要素としては、子どもの意思、年齢、性別、性格、就学の有無、生活のリズム、生活環境、非監護親との関係性が考えられますが、子どもの身体や精神に負担をかけたり悪影響を及ぼしたりすることのないように十分に配慮する必要があります

親に関する要素としては、子どもや監護親に対して暴力を振るったり、過去に暴力を振るっていたりしたために面会交流を実施することで子どもや監護親の精神的負担となるような場合や、子どもを奪い去ってしまう危険性がある場合には面会交流の実施が認められない方向に働くことになりますが、逆に言えば、そのような事情がなければ、基本的には面会交流は認められる方向になると思います。

面会交流の取り決めを求めたい場合には、まず一度弁護士に相談してみてください。

面会交流を取り決めた後、面会交流を拒否された(実施されない)場合は?

では、面会交流を取り決めた後、面会交流を拒否された(実施されない)場合はどうすればよいでしょうか。

以下の各方法が考えられます。

履行勧告

調停や審判で面会交流の取り決めがなされたにもかかわらず、他方当事者がこれを守らず、面会交流ができない場合、まずは裁判所から履行勧告をしてもらうことが考えられます。
履行勧告は、調停や審判で決まった義務を守らない人に対し、それを守らせるために裁判所から働きかける制度です。
具体的には、あなたから家庭裁判所に履行勧告の申出をすると、家庭裁判所から相手方に対し調停や審判の取り決めを守るように書面等で通知します。無料で何度でもできます
ただし、この制度には強制力や罰則等はないため、相手方が応じない可能性もあります

間接強制

一般には、相手方が履行勧告に応じない場合に次の手段として検討する方法です。
間接強制とは、債務(子どもを会わせる義務)を履行しない債務者に対し、一定の期間内に履行しなければ、その債務とは別に間接強制金を課すことを裁判所が警告(決定)することで、義務者に心理的圧迫を加え、自発的な履行を促すものです。
ただし、間接強制が認められるためには、債務者が履行すべき内容が十分に特定されている必要があり、調停や審判での面会交流に関する取り決めがかなり具体的でないと裁判所で認めてもらえません
この点は注意が必要です。

損害賠償請求

間接強制による方法以外に、面会交流を命じた審判等がなされたにもかかわらずこれに従わない場合には、審判等の条項の不履行が不法行為を構成するとして、他方当事者に対する損害賠償が認められる可能性もあります。

補足

時田弁護士

損害賠償請求を認めた裁判例

熊本地方裁判所平成28年12月27日判決(判例秘書掲載)
この事案は、調停離婚後、元妻とその再婚相手が、元夫とその長男(元妻が親権者)との面会交流を妨害したとして、元夫から元妻とその再婚相手に対し、不法行為または債務不履行に基づき損害賠償請求を行った事案です。なお、再婚相手は長男と養子縁組をしていました。
元夫と元妻との離婚調停では、「月2回程度の面会交流をすることを認め、その具体的な日時、場所、方法等は子の福祉を慎重に考慮して当事者間で事前に協議して定める」という取決めをしておりました。しかし、その後、再婚相手は、元夫に対し、「元妻に連絡を取らないでほしい」旨および「長男には会わせない」旨を連絡しました。

元夫は、家庭裁判所を通じて履行勧告を行いましたが、奏功せず、面会交流調停を申し立てました。その結果、面会交流調停では、「年三回の面会交流」を認めることなどを内容とする調停が成立しました。ところが、その後、調停で定めたメールでの面会交流候補日の調整を元妻はせず、元夫が再び履行勧告を申し立てましたが、結局、面会交流が実現しませんでした。その間、履行勧告は、元夫が7回にわたり申し立てましたが、面会交流が実現しない状況が続きました。そこで、元夫は、上記損害賠償請求訴訟を提起したという事案です。

結論から申しますと、元妻は70万円、再婚相手は30万円、元夫に支払うよう命じられました。いずれも不法行為責任となります。

これについて、裁判所の認定は以下のとおりです。

◇ 元妻は、第1回調停(離婚)ではおおよその回数を定めた上、第2回調停(面会交流)においては年間の実施回数、おおよその時期、連絡方法並びに引渡しの時刻及び場所を具体的に定めた上でそれぞれ合意したことが認められるから、この調停に従って、面会交流を実施するために日時等の詳細について誠実に協議すべき義務を負うところ、本件における元妻の行為は、面会交流を実施するための協議を実質的に拒否したものというべきであるから、誠実協議義務違反に当たる

◇ 再婚相手は、調停当事者にはなっていないが、調停期日に出席した上で、元妻の要望を受け手、元夫との間で面会交流のための連絡を取り合うことを了承したこと、また、(養子縁組により)長男の親権及び監護権を行使すべき立場にあって元夫と長男の面会交流について法律上の利害関係を有することを考慮し、元妻の誠実協議義務とは別に、元夫に対し、面会交流のための連絡義務を負っていた

◇ その上、被告らの不法行為は、面会交流の実現を妨げる程度が大きいこと、元夫は約3年5か月間にわたり、長男と面会交流できなかったものであり、長男は7歳から10歳に大きく成長し、そのような大切な時期に面会交流できなかった元夫の精神的苦痛は相当に大きい、と評価しました。
(担当裁判官 当時熊本地裁民事第3部 永田雄一裁判官)

以上、元夫は段階を経て、適正な調停手続を通じて面会交流条件を合意し、さらに履行勧告等取り得る手段を駆使したものの、被告側の不誠実な態度により面会交流が3年5か月も実現しなかったという事案です。元夫の粘り強い態度が、基本的には難しいと考えられる面会交流を拒絶する違法性を認定させたものでしょう。
元妻の協力なくして面会交流が実現できないという男性の立場に理解のある裁判例です。

損害賠償請求を認めなかった裁判例

福岡高裁平成28年1月20日判決(判例時報2291号68号)
一方、高裁レベルでは、やはり厳しい判断もあります。
この事案は、離婚前の夫婦間の事件ですが、夫(第一審原告)が別居中の妻(第一審被告)とその代理人弁護士に対し、調停で合意した面会交流を拒否され、精神的苦痛を受けたとして損害賠償請求を求めた事案です。第一審は、その一部を認容しましたが、控訴裁判所は、面会交流の不実施につき、不法行為責任を生じさせるような誠実協力義務違反があったということはできないとし、夫に対する請求を認容した部分を取り消し、夫の請求を棄却した事案です。

◇ 詳しい事案は、判例時報2291号68号の解説に譲りますが、調停では、面会交流の実施回数と実施日を月2回程度(原則として第2、第4土曜日)と具体的に定め、その具体的日時、場所、方法等の詳細については当事者の協議に委ねておりました。そのため、裁判所は、条理上の注意義務(誠実協議義務)を負担していると認めております。

◇ 一方当事者が、正当な理由なくこの点に関する一切の協議を拒否した場合とか、相手方当事者が到底履行できないような条件を提示したり、協議の申入れに対する回答を著しく遅滞するなど、社会通念に照らし実質的に協議を拒否したと評価される行為をした場合には、誠実協議義務に違反するものであり、本件調停によって具体化された相手方当事者のいわゆる面会交流権を侵害するものとして、相手方当事者に対する不法行為を構成するというべきである、と述べております。

◇ 本件では、同居中に夫から妻に対する暴力があったこと、一方的に謝罪動画を要求したこと、体調不良を理由とすること、調停の場で話し合いをしていたことなど、様々な事情から、不法行為を構成するものとまでは言えないとして、夫の請求を棄却しております。
(担当裁判官 当時福岡高裁第2民事部 田中俊次裁判長 金光健二裁判官 上田洋幸裁判官)

面会交流の取り決めがされたにもかかわらず、拒否されたあるいは何らか理由をつけて実施されない場合には、まず一度弁護士に相談してみてください。

弁護士小野塚直毅(補足 弁護士時田剛志)

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