
こんにちは。弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士 渡邉千晃です。
7月に入ると、受験を控えたお子様を持つご家庭では、塾の「夏期講習」や「受験合宿」の申し込みが本格化します。また、部活動に励むお子様であれば、遠征や合宿の費用が一気に重なる時期でもあります。
これらの費用は数万円から、場合によっては数十万円にのぼることも珍しくありません。離婚後にシングルマザー・シングルファザーとしてお子様を育てている親御さんにとって、「毎月もらっている養育費だけでは、この夏の出費をとても賄いきれない」というのは極めて切実な問題です。
果たして、こうした臨時の高額な教育費は、元配偶者に上乗せして請求できるのでしょうか。弁護士が詳しく解説いたします。
養育費算定表の基本:塾代や合宿費は含まれている?

離婚時に養育費を決める際、多くのケースで裁判所が公表している「養育費算定表」がベースにされています。この算定表は非常に便利なものですが、あくまで「子どもが公立の学校に通う場合の、標準的な教育費」しか想定していません。
つまり、算定表がカバーしているのは、学校の授業料や教科書代、最低限の学習に必要な費用のみです。そのため、以下のような費用は、原則として算定表の金額には「含まれていない」と考えられます。
- 進学塾・予備校の月謝や夏期・冬期講習代
- 私立学校の授業料(公立との差額分)
- 部活動の遠征費や合宿費用
- 習い事の特別な発表会費用
これらは、標準的な養育費とは別に加算を検討すべき「特別の費用」と呼ばれています。
「特別の費用」として認められる3つの請求ライン

算定表に含まれていないからといって、かかった費用を何でも自由に請求できるわけではありません。元配偶者に支払いを求め、それが法的に認められるかどうかは、主に以下の3つの基準によって判断できると考えられます。
① 相手方の「承諾(合意)」があるか
離婚する際、あるいは通塾を始める段階で、相手が「中学受験をさせることに同意していた」、「塾代は別途、分担して支払う約束をしていた」という事実があれば、夏期講習代などの上乗せ請求は認められやすくなると考えられます。
② 父母の学歴・経済力・社会的地位
支払う側(義務者)に十分な経済的余力があるかどうかも考慮要素となります。また、両親ともに大卒である、親族が特定の私立校出身であるなど、「その家庭の生活水準や教育方針からして、大学進学や通塾が当然予測される環境であったか」という点も考慮されます。
③ お子様の必要性と過去の経緯
離婚する前からその塾に通っていた場合や、現在の学力から志望校合格のために夏期講習が客観的に不可欠であると認められる場合です。一方で、単なるレジャー目的の合宿や、事前の相談なしに突然始めた高額な習い事の費用などは、認められにくい傾向にあるかと思われます。
上乗せできる場合の計算方法:単純な「折半」ではない

もし元配偶者が夏期講習代の負担に同意した、あるいは、裁判所から支払いが妥当だと判断された場合、その金額はどのように計算するのでしょうか。
この点、よく「かかった費用の半分(折半)をもらう」と考えがちですが、実務上は、「父母双方の基礎収入(年収)の比率に応じて按分(あんぶん)する」という計算方法をとることが多いかと思います。
【具体的な計算例】
- 夏期講習と合宿の合計費用:20万円
- 父母の年収比(基礎収入比):元夫 7 : 元妻 3
この場合、元夫が負担すべきなのは20万円の7割にあたる14万円となります(元妻の負担は6万円)。
このように、お互いの現在の経済力に応じた公平な分担割合を算出することが、相当であると考えられます。
共同親権下での「事前の相談」

2026年に導入された共同親権制度の下では、子どもの教育方針(進学先やそれに伴う高額な出費)は、単独で決めてよい「日常の事項」ではなく、父母が誠実に話し合って決めるべき「重要な事項」に近づく可能性があります。
共同親権の場合、一切の相談なしに独断で高額な夏期講習や合宿を申し込み、後から「20万円かかったから、年収比で14万円払ってください」と請求しても、相手から「聞いていない」、「その進路には反対だ」と拒絶されるリスクは高いかと考えられます。
共同親権下においては、あらかじめ「夏期講習のパンフレットや見積書」を添えて、進路の必要性を元配偶者に打診しておくことが、トラブルを防ぐために非常に重要なことだと考えられます。
まとめ

子どもの可能性を広げるための夏期講習や合宿。お金のことで親が激しく揉める姿を見せることは、受験を控えたお子様にとっても大きな精神的ストレスになってしまいます。
もし「元配偶者が支払いを拒否している」、「いくら請求するのが妥当なのか分からない」とお悩みであれば、ぜひ一度弁護士への相談をご検討ください。
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この記事を書いた弁護士:弁護士 渡邉千晃
離婚・不倫慰謝料
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。令和4年登録後、離婚案件を中心にこれまで多数の相談を受け、親権争いや財産分与など、複雑な離婚問題を解決に導く。単なる法的解決にとどまらず、依頼者の精神的負担にも配慮した事件処理を身上とする。不貞の慰謝料請求事件も多数携わり、慰謝料請求訴訟を含む実務にも精通する。不動産チームにも所属し、財産分与における不動産の取扱いについても知見を有する。





