父親として親権を取るために知っておくべきこと 男性の離婚における親権・養育費・財産分与の法律知識【2026年4月民法改正対応】
父親として親権を取るために知っておくべきこと 男性の離婚における親権・養育費・財産分与の法律知識【2026年4月民法改正対応】

「離婚したいが、子どもと離れたくない」という思いを抱える父親は多くいます。2026年4月1日の民法改正により、離婚後の共同親権が新たに選択できるようになりました。しかし、制度はスタートしたばかりであり、単独親権も依然として認められており、どちらが選ばれるかは子の福祉を軸に判断されます。本記事では改正民法の条文を踏まえながら、親権・面会交流・養育費・財産分与について法的根拠に基づく実践的な知識を弁護士が解説します。

1 父親が親権を取れないは誤解?現実と戦略

1 父親が親権を取れないは誤解?現実と戦略

「父親に親権が渡るケースは少ない」というのは統計的な事実です。家庭裁判所の審判・調停における親権者は80〜90%が母親であり、父親が単独親権を得るのは容易ではありません。しかしこれは「父親には親権が取れない」という意味ではなく、「これまでの育児実績において母親が主たる監護者である場合が多い」という実態を反映したものです。

裁判所が親権を判断する際に重視する3つの基準

継続性の原則:これまでどちらが主に子どもの世話をしてきたかという監護実績が最重視されます。現在の生活環境を大きく変えることは子どもの精神的安定を損ねるとして、現状維持が優先される傾向があります。

子の意思の尊重:子どもがある程度の年齢(概ね10歳以上)になると、どちらと暮らしたいかという意思が考慮されます。

監護能力:親として子どもの生活・教育・精神的サポートを担える経済力と環境があるか。

これらを踏まえると、父親が親権を取るためには、離婚を切り出す前の段階から育児への積極的な参加実績を積み上げることが最も効果的な戦略です。保育園や学校への送迎、食事の用意、習い事の付き添い、病院受診の対応など、育児記録(スケジュール帳、写真、学校との連絡帳など)を丁寧に残しておきましょう。

2 【2026年4月民法改正】共同親権制度の導入とは

2 【2026年4月民法改正】共同親権制度の導入とは

2026年4月1日、「民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)」が施行され、離婚後の親権制度に関する大きな制度変更が実現しました。これまで日本では離婚後は必ず「父または母のどちらか一方」が親権を持つ単独親権制度のみでしたが、改正により父母の双方が親権を持つ「共同親権」も選択できるようになりました。

改正前後の比較

 改正前(〜2026.3.31)改正後(2026.4.1〜)
親権の選択肢単独親権のみ(父または母の一方)単独親権または共同親権を選択可能
協議離婚の場合一方を親権者に指定(必須)一方または双方を親権者に指定(協議)
裁判離婚の場合裁判所が一方を指定裁判所が一方または双方を指定
判断基準特に明文規定なし(実務では子の利益)子の利益を最優先に明文で規定(DV・虐待は単独親権)

改正民法の主要条文(抜粋)

■ 改正後 民法第819条(離婚後の親権者)第1項  
「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定め、
又は父母の双方を親権者と定めることができる。」  
(改正前:「…その一方を親権者と定めなければならない。」→ 単独親権のみ)
■ 改正後 民法第819条第6項(新設:裁判所の判断基準)  
「裁判所は、子の利益のために必要があると認める場合に限り、父母の双方を親権者と定めることができる。  
次のいずれかに該当する場合には、父母の一方を親権者と定める。  
一 父又は母による子への虐待又は配偶者に対する暴力その他の事情を考慮して、    
父母の双方を親権者と定めることが子の利益を害すると認められるとき。」  
(DV・虐待がある場合は共同親権は認められない)
■ 改正後 民法第824条の2(新設:共同親権の行使方法)  
第1項「父母が共同して親権を行う場合には、親権は、父母が共同して行使する。     
ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行使する。」  
第2項「子の日常の世話に関する行為その他の軽微な行為については、     
各自単独で行使することができる。」  
第3項「急迫の事情があるときは、前二項の規定にかかわらず、各自単独で行使することができる。」

つまり何が変わったのか:3つのポイント

第一に、離婚後であっても父母が協力して子どもの教育・医療・進路などの重要事項を一緒に決める「共同親権」が、当事者の合意または裁判所の判断によって選べるようになりました。

第二に、共同親権の場合でも、日常生活上の細かな事項(食事・衣服・習い事の日程調整など)については各親が単独で判断できるため、毎日の生活に支障をきたす事態は防がれています。

第三に、DV・虐待がある場合は共同親権は選択できず、子どもを守るための安全弁が明文化されました。

3 弁護士からの実務的な見解:共同親権制度の現実

3 弁護士からの実務的な見解:共同親権制度の現実
弁護士 時田剛志からの実務コメント
2026年4月1日から共同親権が選択できるようになりました。これは日本の家族法制における数十年ぶりの大改革です。  

ただし、依然として単独親権もその制度上認められております。
単独親権と共同親権とは、原則・例外などの関係にはなく、子の福祉を踏まえて決せられることになります。  

当事者間で共同親権とすることに異論がなく、親同士として問題なく対応できるケースでは共同親権が認められるのですが、 親同士が熾烈に争っているなど敵対心を抱いている場合には共同親権が認められない方向に傾くと考えられます。  

実際に共同親権を目指したいという熱意ある方の事案で適切に定められるかどうか、依然として課題が残ります。  

いずれにせよ、共同親権の制度はスタートしたばかりですので、積極的に議論してまいりましょう。  

(弁護士 時田剛志)

父親として共同親権を希望する場合に準備すべきこと

共同親権を希望する場合、「子の福祉に適う」と判断されるためには、以下の準備・実績が重要になります。

  • 婚姻中から積極的に育児に関与し、その記録(写真・連絡帳・送迎記録等)を保管しておく
  • 相手方(元妻)とのコミュニケーションが一定程度保てることを示す(メールや協議の記録)
  • DV・虐待・過度の紛争状態がないことを証明できる状況を整える
  • 共同親権下での具体的な養育計画(子どもの居所・教育方針・医療対応等)を準備する

裁判所は「共同親権が子どもにとってプラスになるか」という視点で審査します。形式的な共同親権の希望だけでなく、具体的・実質的な養育参加の実績と将来計画が問われます。

4 親権を得られなかった場合の「面会交流権」の重要性

4 親権を得られなかった場合の「面会交流権」の重要性

たとえ親権が妻に渡ったとしても、父親には「面会交流権」が認められます。これは、子どもが非監護親(一緒に暮らさない親)と定期的に会い、健全な親子関係を維持する権利であり、子どもの健全な発達のために法的に保障されたものです(民法第766条)。

■ 民法第766条第1項(抜粋)  
「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及び  その他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」

面会交流の内容(月に何回会えるか、泊まりは可能か、電話・ビデオ通話は認めるかなど)は、離婚協議または家庭裁判所での調停によって決定されます。母親が感情的になって「子どもには会わせない」と主張することがありますが、子どもの福祉に反する特別な事情がない限り、裁判所は面会交流を認める方向で判断します。

離婚条件を取り決める際は、面会交流の内容を「月2回、第1・第3日曜日の10時〜18時」のように具体的に取り決め、書面(調停調書や公正証書)に明記しておくことが後のトラブル防止に欠かせません。なお、2026年4月の民法改正により、共同親権を選択しなかった場合でも面会交流の重要性はさらに高まっており、非監護親(父親)と子どもとの交流は子の福祉の観点から尊重されます。

5 離婚における男性の財産分与の注意点

5 離婚における男性の財産分与の注意点

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた「共有財産」を原則2分の1ずつ分け合う制度です。これは夫婦どちらからの申し立てによっても行われ、夫婦の一方が専業主婦(夫)であっても貢献度は平等とみなされます。

特有財産の主張:婚姻前から持っていた財産(独身時代の貯金や相続財産)は「特有財産」として分与対象から外れます。ただし、婚姻前の財産と婚姻後の財産が混在している場合は、証拠がないと主張が通りにくくなります。銀行の取引履歴や独身時代の通帳コピーを保管しておくことが重要です。

退職金の取扱い:将来支給予定の退職金であっても婚姻期間に対応する部分は分与対象になり得ます。退職予定時期が近い場合は早めに弁護士に相談して対策を検討してください。

住宅ローン付き不動産:現在の不動産価値からローン残高を差し引いた価値が財産分与の計算基礎となります。価値がローン残高を下回る(オーバーローン)場合は分与対象にならないことが一般的ですが、名義と居住者の関係など複雑な問題が発生することがあります。

6 養育費の支払い義務と賢い対応

6 養育費の支払い義務と賢い対応

離婚後に子どもの親権が妻に渡った場合、男性には養育費の支払い義務が生じます。養育費は子どもの権利であり、父親の収入と子どもの年齢・人数に応じて裁判所の「養育費・婚姻費用算定表」をもとに計算されます。

なお、共同親権を選択した場合でも養育費の問題はなくなりません。子どもが主に居住する親元での生活費を、もう一方の親が分担するという形は変わらないため、養育費の算定・取り決めは丁寧に行う必要があります。

重要なのは、養育費の金額を感情任せに決めないことです。収入の変化(転職、病気、再婚など)があった場合は、家庭裁判所に「養育費減額調停」を申し立てることで正式に金額を見直すことができます。自分で勝手に支払いを止めたり減額したりすれば、強制執行(給与の差押え)をされる可能性があります。生活状況の変化があれば、必ず法的手続きを通じて変更するようにしましょう。

7 男性の離婚問題を弁護士に依頼すべき理由

7 男性の離婚問題を弁護士に依頼すべき理由

男性が離婚問題を一人で抱えると、精神的な消耗が激しく、冷静な判断が難しくなります。特に2026年の民法改正後は、「単独親権か共同親権か」という新たな選択肢が加わり、制度の理解・交渉の複雑さはさらに増しています。

弁護士を依頼することで、妻の代理人弁護士との対等な交渉が実現し、感情的なやり取りを排して法的根拠に基づいた主張が可能になります。また、共同親権を希望する場合は、どのような証拠・実績・養育計画があれば認められる可能性が高いかを具体的にアドバイスし、面会交流の取り決め方についても実務経験に基づいた提案が可能です。

共同親権制度はスタートしたばかりです。裁判所の判断傾向もまだ確立途上であり、まさに今、専門家と議論を重ねながら最善の方針を立てることが、お子様との関係を守るための最善策となります。まずは専門家へのご相談から一歩を踏み出してください。

グリーンリーフ法律事務所からのメッセージ

私たちは、開所以来35年以上、離婚問題にお悩みの方に一貫して寄り添って参りました。離婚という法律問題に関し、ご相談者、ご依頼者がより充実した日常を取り戻していただくために、法的な専門知識と経験を活かして、全面的にサポートいたします。あなたの未来への不安を解消し、前を向くきっかけ作りをお手伝いさせてください。お客様満足度は92.9%となっており、多くのお客様にご満足いただいております。私たちの持てる知識と経験を活かして、みなさまの明日が少しでも明るいものになるように親身に寄り添い、真剣に対応させていただきます。まずはグリーンリーフ法律事務所にご相談ください。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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