
離婚や別居によって子どもと離れて暮らすことになった親(別居親)にとって、「我が子に会いたい」「成長を近くで見守りたい」と願うのはごく自然な思いです。
しかし、同居している親(同居親)から「子どもが会いたがっていない」「過去の葛藤から顔も見たくない」「養育費を払わないなら会わせない」といった理由で、親子交流(面会交流)を拒否されるケースは後を絶ちません。
理由もなく我が子との会う権利を奪われ、連絡すら遮断されてしまうと、深い絶望や精神的な重圧に押しつぶされそうになることもあるでしょう。
しかし、親子交流は親の権利であるだけでなく、子どもの健全な成長のために認められた「子どもの権利」でもあります。 同居親が感情的・一方的な理由で拒否している場合、法的な手続きを踏むことで再開や適切な実施を取り決めることが可能です。
本コラムでは、親子交流(面会交流)を拒否された場合の具体的な対処法、裁判所での手続き(面会交流調停・審判)、不履行時の強制措置(間接強制)、そして2026年4月施行の改正民法による「共同親権導入」や「親子交流の活性化」への影響まで、弁護士の視点から分かりやすく徹底解説します。
そもそも「親子交流(面会交流)」とは?

「親子交流(面会交流)」とは、離婚や別居により子どもと離れて生活している親が、子どもと定期的に会って話をしたり、一緒に遊んだり、電話や手紙・メールなどで交流を深めたりすることを指します。
親子交流の基本原則:「子どもの利益」が最優先
家庭裁判所の実務において、親子交流の可否や具体的内容を決める際に最も尊重されるのは「子の利益(子どもの健全な成長と福祉)」です。
両親の夫婦関係が破綻して離婚に至ったとしても、子どもにとって双方の親から愛されていると感じられる環境は、自己肯定感や精神的安定のために極めて重要です。そのため、裁判所は「原則として親子交流を実施することが子どもの福祉に適う」という立場で判断を行います。
「養育費の不払い」や「性格の不一致」は拒否の理由にならない
よくある誤解として、「相手が養育費を支払ってくれないから会わせない」「元配偶者のことが嫌いだから拒否する」というものがあります。
しかし、法律上、「養育費の支払い」と「親子交流の実施」は全く別の問題(対価関係にない)として扱われます。したがって、養育費の滞納があることや、元夫婦間の感情的な不仲・性格の不一致だけを理由に親子交流を拒否することは法的に認められません。
親子交流の拒否が正当化される「正当な理由」とは?

原則として実施されるべき親子交流ですが、以下のような事由が存在し、「交流させることがかえって子どもの福祉を害する」と客観的に判断される場合には、拒否が認められたり、交流が一時停止・制限されたりすることがあります。
① 身体的・心理的虐待(DV・モラハラ)のリスクがある場合
別居親から子どもに対して直接的な身体的暴力やネグレクト、暴言などの虐待があった場合や、同居親に対する激しいDV・モラハラがあり、子どもに深刻なトラウマを与えている場合です。子どもや同居親の生命・身体の安全が脅かされる恐れがある場合、面会は拒否または制限されます。
② 子どもを連れ去るおそれがある場合
過去に無断で子どもを連れ去った実績がある場合や、面会交流の際に子どもをそのまま連れ去って連れ帰らない強い懸念が存在する場合、安全が確保できる枠組み(第三者機関の立ち会い等)が整わない限り、直接の面会は難しくなります。
③ 子ども自身が明確に拒否している場合
子どもがある程度の年齢(特に10歳〜15歳以上など)に達しており、自分の意志で「会いたくない」と明確かつ継続的に拒絶している場合、子どもの意思が強く尊重されます。ただし、同居親による悪口の吹き込みや誘導によって子どもが意向を言わされている懸念がある場合は、家庭裁判所の調査官が慎重に子どもの真意を見極めます。
親子交流を拒否された場合の具体的な「3つの対処法」

相手から拒否された際、感情的に相手の自宅や学校へ押しかけたり、強引に子どもを連れ出そうとしたりする行為は絶対に避けてください。かえって「違法な連れ去り」や「不法侵入」として扱われ、今後の手続きで極めて不利になってしまいます。
合意に基づく解決を目指し、以下のステップで冷徹かつ着実に進めることが鉄則です。
ステップ1:当事者間での協議・交渉(条件の柔軟化)
まずは相手がなぜ拒否しているのか、理由を正確に把握します。
相手が「直接会わせるのが不安」という理由で拒否している場合は、最初から直接面会を固執するのではなく、段階的な交流案を提示することが有効です。
- 写真や動画の送付:子どもの近況写真や動画を定期的に送ってもらう。
- 手紙やプレゼントの送付:誕生日やイベント時に手紙やメッセージカードを渡す。
- オンライン面会:ZoomやLINEビデオ通話などを利用した短時間の交流。
- 第三者機関の利用:面会交流支援団体(FPICなど)の立ち洗いや受け渡し補助を利用する。
このように相手のハードルを下げた提案を行うことで、拒否の態度が和らぐことがあります。
ステップ2:家庭裁判所へ「親子交流(面会交流)調停」を申し立てる
当事者同士の話し合いが平行線をたどる場合や、相手が連絡自体を無視・拒否している場合は、速やかに家庭裁判所へ「親子交流(面会交流)調停」を申し立てます。
- 調停の流れ:裁判所から選任された中立的な調停委員2名と裁判官で構成される調停委員会が、当事者双方から交互に意見を聴き取ります。直接相手と顔を合わせずに話し合いを進めることが可能です。
- 家庭裁判所調査官の活用:必要に応じて、家庭裁判所調査官が子どもと面談を行ったり、試行的面会交流(裁判所内の専門のお部屋で試しに親子で遊ばせ、双方の様子を観察する手続き)を実施して、適正な交流方法を模索します。
ステップ3:調停不成立から「審判」への移行
調停でも相手がかたくなに拒否し続け、合意に至らなかった場合、調停は不成立となり「審判手続き」へ自動的に移行します。
審判では話し合いではなく、裁判官が双方の主張や家庭裁判所調査官の調査結果、提出された証拠を総合的に考慮し、「面会交流を認めるか否か」「認める場合の頻度・日時・場所・連絡方法などの具体的条件」を決定(審判)として言い渡します。
取り決めたのに守らない!「不履行時」の強力な法的措置

調停や審判、あるいは公正証書によって「毎月1回、第2土曜日に面会する」といった明確な取り決めをしたにもかかわらず、相手が再び理由をつけて拒否したり無視したりするケースがあります。
このような取り決め破りに対しては、以下の公的な不履行対策手続きをとることができます。
履行勧告
家庭裁判所に対し、「取り決めた面会交流が実施されない」旨を申し出ます。裁判所から相手方に対して調査を行い、取り決めを守るよう電話や書面で指導・勧告(履行勧告)を行ってもらう手続きです。費用はかかりませんが、強制力(ペナルティ)までは伴わないため、応じない相手も存在します。
間接強制
面会交流の取り決め内容が「日時・頻度・方法・受渡場所」など具体的に特定されている場合、地方裁判所へ「間接強制」の申し立てを行うことができます。
間接強制とは、「1回面会を拒否・不履行するごとに、〇万円の制裁金を支払え」という決定を相手に出す手続きです。金銭的なペナルティを課すことで精神的プレッシャーを与え、自発的な面会の実施を促します。
【令和8年4月1日施行】民法の改正と共同親権が親子交流に与える影響

2026年(令和8年)4月1日施行の民法により、日本の親権制度は大きな転換期を迎えました。従来の「単独親権」に加え、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」が導入されました。
この民法改正は、親子交流(面会交流)の実務にも非常に大きな好影響を与えています。
親子交流(面会交流)のさらなる活性化と推進
旧法下の単独親権制度では、親権を得られなかった側の親(別居親)が子育てから孤立し、面会交流も途絶えてしまうケースが多発し社会問題となっていました。
新制度のもとでは、離婚後も父母が共に親としての責任を果たすことが重視され、裁判所においても「親子交流の積極的な実施」がこれまで以上に強く推奨されています。
親子交流のトラブルを弁護士に依頼するメリット

親子交流をめぐるトラブルは、元夫婦間の感情的な対立や過去の不満が根深く絡み合っているため、当事者同士で交渉しようとしても激しい喧嘩に発展し、かえって事態が悪化することがほとんどです。
弁護士へご相談・ご依頼いただくことで、以下のような大きなメリットが得られます。
メリット①:感情論を排し、子どもの福祉に基づく適切な条件を提示できる
弁護士が代理人となることで、当事者同士の不毛な感情論を排し、「子どもの年齢や生活リズムに合わせた最適な交流頻度・場所・ルール」を客観的・論理的に組み立てて相手や裁判所に主張できます。
メリット②:相手との直接交渉のストレスから解放される
弁護士へ依頼した瞬間から、相手方とのやり取りはすべて弁護士が窓口となります。相手からの暴言や理不尽な拒絶に直接晒されることがなくなり、精神的な負担が劇的に軽減されます。
まとめ

- 親子交流(面会交流)は親の権利であると同時に、子どもの健やかな成長のための「子どもの権利」である。
- 相手(同居親)の個人的な感情や「養育費の不払い」を理由とする面会拒否は法的に認められない。
- 虐待やDV、連れ去りのリスクがない限り、裁判所は原則として親子交流を認める方針をとる。
- 拒否された場合は感情的にならず、面会交流調停・審判の手続きを速やかに進める。
- 令和8年4月施行の民法の改正(共同親権導入)により、親子交流の活性化はさらに推進されている。
「子どもに会いたいけれど、相手が拒否して取り合ってくれない」
「連絡先をブロックされ、我が子の様子すら分からない」
このような状況でお悩みの方は、決して一人で抱え込まず、早い段階で離婚・親権・面会交流問題に詳しい弁護士へご相談ください。大切な我が子との絆を取り戻し、健全な形で成長を見守っていけるよう、最適な解決策をご提案いたします。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。
この記事を書いた弁護士:弁護士 椎名慧
離婚・不倫慰謝料
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。令和7年登録後、離婚案件を中心に多数の家事事件に対応。依頼者の心情に寄り添った丁寧なヒアリングと、迅速な紛争解決の実務に精通している。夫婦間で激しい感情の対立がある状況において、粘り強い交渉力を発揮し、円満な解決に向けた法的支援に注力。若手ならではの機動力と最新の判例知識を武器に、依頼者の最善の利益確保に邁進している。






