妻が不倫をしていた場合、あなたは妻と不倫相手の男性の2人によって精神的に傷つけられたことになります。
この場合、妻と不倫相手の男性には、共同不法行為が成立し、2人は、夫であるあなたに対して連帯して損害を賠償する義務を負います(民法719条)。
したがって、あなたは妻のみならず、不倫相手の男性に対しても慰謝料を請求することができます。
では具体的にどのような方法・手続により請求することができるのか、以下で解説していきます。
不倫相手の男性に対し慰謝料を請求する場合の手続
大きく分けて以下、3つの方法があります。
交渉
まずは相手に請求をしなければ始まりません。
もっとも、口頭だけでは後で「聞いた/聞いていない」という水掛け論になる可能性もあるので、書面で請求すべきです。
この書面もまた、後で「受け取った/受け取っていない」という話になることを防ぐため、内容証明郵便もしくは特定記録郵便又はその両方で送付するべきです。
調停
交渉がうまくいかなかった場合もしくは交渉をせず、いきなり調停を申し立て、慰謝料を請求することも可能です。
この場合、簡易裁判所のほか家庭裁判所も、不倫相手に対する調停の申立てを受理する取り扱いとなっているようです。
訴訟
交渉や調停がうまくいかなかった場合もしくは交渉・調停をせず、いきなり訴訟(裁判)を起こすことも可能です。
ただしこの場合は、以下に述べるような、不貞行為の証拠がなければ、慰謝料が認められない可能性があります。
証拠について
不貞行為について慰謝料を請求する場合、最も重要なのは、その証拠です。
裁判所は証拠に基づき判断します。証拠がなければ、不貞行為の事実を認定してくれません。
そのため、しっかりと証拠を集めていただく必要があります。
具体的な証拠としては、以下のようなものがあります。
探偵事務所などの調査報告書
一番詳細かつ決定的な証拠を得られる可能性が高いものです。
例えば、配偶者が不貞相手とラブホテルに入って、そこから出てくる写真などであれば、決定的です。
携帯電話等のLINEやメール
配偶者と不貞相手との間で、LINEやメールのやりとりをしているケースは多いです。実際、裁判などにおいても、メールのやりとりが証拠として提出されることも多くあります。
しかし、単にメールがあればよいというわけではなく、その内容が重要です。不貞行為=性行為があったことを前提とするようなやりとりがなされている必要があります。
このような疑わしいメールは、携帯電話の画面を写真で撮っておいたり、自分の携帯電話などに転送したりして、証拠化するようにしましょう。
なお、いつ、誰から誰に送ったのか明らかにする必要がありますので、やりとりした年月日、日時と、送受信相手が分かるようにしておくべきです。携帯電話に愛称などで登録されている場合には、やりとりの相手が、問題となっている不貞相手であることを特定しなければなりません。
そこで、電話帳やメッセージ内のやりとりの中などで、その送受信相手の本名や住所など個人が特定できる情報が記録されていれば、そのような情報もあわせて証拠としてとっておくことが重要です。
配偶者の証言の証拠化
配偶者に問い詰めたときに、自ら不貞行為の事実を認めることがあります。
しかし、いったん認めたとしても、いざ裁判などとなれば、「そんなこと言っていない」と主張されてしまいますので、全く意味がありません。
そこで、そのような「言った/言わない」を防ぐため、配偶者の証言を録音しておくことが考えられます。
録音する内容としては、単に「浮気しました」では足りません。できるかぎり具体的な内容を録音するようにしましょう。
写真
写真は、SNSなどで公開されていなくとも、携帯電話などに保管されている場合があります。中には、配偶者と不貞相手とが性交渉を行っている様子そのものを撮影した写真が保存されている場合もあります。そのような写真は、不貞行為の事実を示す極めて強い証拠になりますので、自分の携帯電話などに転送したり、写真を表示した画面を写真撮影したりするなどして、保管しておくようにすべきです。
SNSなどのやり取り
フェイスブックやツイッターなどのSNS上のやり取りやその中の写真などが不貞行為の証拠となることもあります。
特に、フェイスブックのアカウントは実名であることがほとんどですので、不貞相手も特定しやすくなります。
慰謝料の相場
慰謝料金額の算定において取り上げられる要素としては、「婚姻関係破綻の有無」、「不貞期間」、「不貞行為の態様」、「どちらが主導的役割を果たしたか」、「未成年の子の有無」、「請求者側の落ち度の有無」など様々であり、統一的な算定基準を示すことは困難です。
事案によっては50万円程度と認定されたり、300万円以上と認定されるケースもありますが、裁判上の慰謝料の相場は、100万円~300万円くらいに落ち着くことが多いように思います。
その他の問題
不貞慰謝料請求の時効は、その原因(不貞)を知ったときから3年です。
そのため、その期間については注意が必要です。