弁護士 吉田 竜二(埼玉弁護士会所属)

子どもを連れて家を出た妻から婚姻費用を請求されるということがあります。
妻が子どもとの面会を何かと理由をつけて拒否している場合、婚姻費用を支払わないという対抗策をとるべきでしょうか

結論として、婚姻費用を支払わないという選択肢はお勧めできません
心情面はさておき、法律上、婚姻費用の支払いと子どもとの面会交流は連動しないものとされており(面会交流の有無に関わらず妻や子どもの生活のための婚姻費用は必要である)、婚姻費用を支払わないという行動が離婚や面会交流に不利に働くためです。

正攻法は、婚姻費用を負担しつつ面会交流について協議をするということになりますが、あくまでも妻が面会交流に応じない場合、最終的な履行確保には限界があると言わざるを得ません。

婚姻費用を支払わない相手方に対しては給与や預金を差し押さえるという方法で支払いを強制することができますが、面会交流に応じない相手方に対して面会交流を直接的に強制する方法(=執行機関が子どもを連れてきて面会交流を実現する方法)がありません。

面会交流に応じない場合、1回ごとに罰金を支払わせるという間接的な方法は存在しますが、前提条件が厳しく(子どもとの面会交流の内容を詳細に定めておく必要がありますが、面会交流に否定的な妻とそのようなやり取りができるとは思いません)適用の余地はあまりないという印象です。

履行確保の点については夫の側が不公平感を感じるルール設定になっており、子どもと離れて暮らすこととなった側の立場上の弱さを感じます。

そのため、最終的な局面に陥る前に適切な対応をとることが重要です。婚姻費用と面会交流の件でお悩みの方は、是非一度専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。